SAP FI/COコンサルがフリーランスになるには|必要な経験と独立までの進め方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
SAP FI/COコンサルとしてフリーランスになるには、会計・管理会計の業務知識と、FI/COの設定(カスタマイズ)を自分で行い、導入や移行のプロジェクトで工程を担った経験が必要です。案件では、「SAPを触ったことがある」より、どの機能を、どの工程で、どこまで自分で担ったかが細かく確認されます。
独立の準備は、担当した機能と工程を表にして棚卸しし、会計の言葉で業務を説明できるようにすることから始めます。そのうえで、自分の経験に合った案件の型を選ぶと、最初の参画がしやすくなります。
経験は「機能 × 工程」の表で棚卸しする
FI/COの経験は、範囲が広いため、言葉で並べるだけでは伝わりにくくなります。担当した機能と工程を表にして、自分の経験の厚い部分と薄い部分を見える状態にしておきましょう。
| 機能 | 主な内容 | 構想・要件定義 | 設計・設定 | テスト | 移行・本番 | 保守 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総勘定元帳(GL) | 勘定科目、決算の仕組み | |||||
| 債務管理(AP) | 支払、請求書の処理 | |||||
| 債権管理(AR) | 入金、消込、与信 | |||||
| 固定資産(AA) | 取得、減価償却、除却 | |||||
| 原価センタ会計(CCA) | 部門別の費用管理、配賦 | |||||
| 収益性分析(CO-PA) | 製品・顧客別の採算 | |||||
| 製品原価計算 | 標準原価、実際原価 |
表の空欄に、担当した場合は「◯」、一部を担当した場合は「△」のように書き込んでみてください。すべてを埋める必要はありません。案件側は、どの機能を自分で設定し、どの機能は会話ができる程度かという区別を知りたいと考えています。
会計の業務知識はどこまで必要か
FI/COの案件では、経理担当者や経理部長と、決算の手順や勘定の扱いについて会話する場面が多くあります。簿記の考え方、月次・年次の決算の流れ、管理会計の配賦の考え方を、システムの言葉ではなく会計の言葉で説明できることが前提になります。経理の実務経験がある人は、それ自体が強みになります。日本の会計や税の制度に関わる対応(たとえば消費税のインボイス制度への対応)を経験していれば、具体的に書いておきましょう。インボイス制度の概要はインボイス制度の基本で解説しています。
FI/COの案件の主な型
| 案件の型 | 主な作業 | 見られやすい経験 |
|---|---|---|
| 新規導入・再構築 | 要件定義、設計、設定、テスト | 業務要件から設定に落とした経験 |
| S/4HANAへの移行 | 現行の調査、移行方式の検討、データ移行、テスト | 旧環境と新環境の違いの理解、移行の経験 |
| 海外拠点への展開(ロールアウト) | テンプレートの適用、各国の要件の調整 | 英語でのやり取り、複数の会社コードの扱い |
| 保守・運用 | 問い合わせ対応、決算期の支援、小さな改修 | 本番環境での障害対応、決算期の運用 |
S/4HANAへの移行が案件の大きな動機になっています。SAPは2020年2月の発表で、SAP Business Suite 7の主要なアプリケーションについて、標準の保守を2027年末まで、オプションの延長保守を2030年末まで提供し、S/4HANAの保守を2040年末まで約束するとしています。移行の案件では、FI/COの設定の経験に加えて、旧環境の設定を読み解き、新しい環境での扱いとの違いを説明できる経験が見られやすくなります。移行の案件そのものについてはS/4HANA移行がフリーランスになるにはで解説しています。
他モジュールとの連携を説明できるか
会計のデータは、販売(SD)、購買(MM)、生産(PP)などの取引から流れてきます。FI/COの案件では、他のモジュールからの仕訳がどう生成されるか、どこで設定がつながっているかを理解しているかがよく問われます。連携の不具合をどう切り分けたかといった経験は、面談で具体的に話せるようにしておきましょう。販売・購買側の独立についてはSAP SD/MMコンサルがフリーランスになるにはで解説しています。
ユーザー企業側かベンダー側か
FI/COの案件には、導入を請け負う会社のチームに入る形と、ユーザー企業の側で導入を管理する形があります。ベンダー側では設定やテストを手を動かして進める力が、ユーザー企業側では経理部門の要望をまとめ、ベンダーの設計を確かめて受け入れを判断する力が求められます。自分の経験がどちらの立場に寄っているかを把握しておくと、応募する案件を選びやすくなります。
独立前に積んでおきたい実績
会社員のうちに、次の経験を意識して積んでおくと、独立後に参画できる案件の幅が広がります。
- 要件定義の場に出た経験:経理部門と直接話し、要件を決めた経験。設定作業だけの経験より、任される範囲が広がる
- 本番の決算を支えた経験:稼働直後の月次決算を、利用者と一緒に乗り越えた経験
- COの経験:配賦や原価計算の設定はFIとは別の考え方が要るため、担った経験は強みとして伝えやすい
- S/4HANAでの経験:新しい環境での設定や、移行のプロジェクトに関わった経験
SAPの認定資格は、知識の裏付けとして役立つことがあります。資格の名称や試験の内容は改定されることがあるため、受験を考える場合はSAPの公式の案内で最新の情報をご確認ください。
独立までの進め方
1. 棚卸しとスキルシート
上の「機能 × 工程」の表を手元で作り、プロジェクトごとに、業種、会社の規模、導入したバージョン(ECCかS/4HANAか)、自分の役割を書き出します。スキルシートでは、この表をもとに担当範囲が一目で分かる形にまとめます。書き方はSAP FI/COコンサルのスキルシートの記事で解説しています。
2. 条件を決めて案件を探す
SAPの案件は、プロジェクトの工程によって、出社が求められる時期とリモートで進めやすい時期が分かれることがあります。稼働日数、出社の頻度、希望する報酬の下限、英語を使う案件を受けるかどうかを決めておきましょう。報酬の決まり方はSAP FI/COコンサルの報酬の記事、案件の探し方はフリーランスエージェントの使い方をご覧ください。
3. 手続きとお金の準備
独立したら、事業を始めた年分の確定申告期限までに、納税地の税務署へ開業届を出すことになっています。青色申告を選ぶ場合、1月16日以降に開業した人は、事業開始日から2か月以内に承認申請書を出します(いずれも2026年10月時点、国税庁の案内による)。会計の専門家であっても、個人事業の税務は会社の経理とは扱いが違う点があるため、迷う場合は税理士にご相談ください。手順は開業届の出し方と会社員からフリーランスになる手順で解説しています。
契約で確かめておきたいこと
FI/COの案件は、多くの場合、準委任契約で月単位に稼働します。設定やテストの作業が中心の案件でも、成果物の完成を約束する請負の形になっていないかを確かめておくと安心です。契約の違いは準委任契約と請負契約の違いで解説しています。
フリーランス法では、発注側は業務を委託したときに、業務の内容、報酬の額、支払期日などを書面またはメールなどで直ちに明示する必要があります。報酬の支払期日は、給付を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間で定めることとされています(公正取引委員会の案内による)。
よくある質問
経理の経験しかなくてもSAP FI/COコンサルになれますか?
経理の実務経験は強みになりますが、フリーランスの案件では、FI/COの設定を自分で行った経験が求められることが多くなります。社内のSAP導入プロジェクトに業務側の担当として関わり、設定の考え方を学んでから、キーユーザーや導入支援の立場で経験を積む進め方が現実的です。
ECCの経験しかないと不利ですか?
ECCの経験は、S/4HANAへの移行の案件で、旧環境の設定を読み解く力として生かせます。そのうえで、S/4HANAでの会計の扱いの違いを学び、説明できるようにしておくと、移行の案件に参画しやすくなります。
保守・運用の経験だけで独立できますか?
保守・運用の案件で参画できることはあります。本番環境での障害対応や決算期の運用の経験は、導入プロジェクトでも役立ちます。導入の案件に広げたい場合は、改修の中で要件の整理や設計を担った経験を具体的に整理しておきましょう。
参考にした公的情報・資料
- SAP S/4HANA maintenance until 2040(SAP News Center)
- No.2090 新たに事業を始めたときの届出など(国税庁)
- 所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)
- フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。