参画中に追加の依頼を断るときの伝え方|関係を崩さない言い方と例文
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
参画中に追加の依頼を断るときは、断る理由を「契約の範囲」「稼働の上限」「今の作業への影響」のどれかに置き、代わりにできることを一つ添えて、メールやチャットなど文字で返すのが基本です。気持ちや都合ではなく、相手も確かめられる事実を理由にすると、関係を崩さずに済みます。
依頼を受けるか断るかの判断や、範囲が広がったときの契約の直し方は作業範囲が広がったときの記事で扱っています。この記事では、「断る」と決めたあとの伝え方に絞って、言い方の型と場面ごとの例を紹介します。
断る前に、依頼の中身を一度確かめる
断り方を考える前に、依頼の内容を確かめます。口頭や雑談の流れで頼まれた依頼は、頼んだ側も中身を詰めていないことがよくあります。いきなり断るより、次の3点を聞き返すだけで、話が小さくなることもあります。
- 何を、いつまでに:作業の中身と期限。期限が来月なら、今月の作業を崩さずに受けられる場合がある
- 誰の判断か:担当者個人の思いつきか、プロジェクトとして決まったことか
- 代わりはいるか:ほかのメンバーや社員が担う予定のものか
聞き返すときは、「確認させてください」と前置きして、文字で返すと記録にもなります。フリーランス法では、発注側は業務の内容を含む取引条件を書面や電子メールなどで示すことになっています(第3条)。手元にある業務の内容と、聞き返して分かった依頼の中身を並べると、範囲の内か外かを落ち着いて判断できます。取引条件の明示の中身は取引条件の明示の記事をご覧ください。
伝え方の型:受け止める→理由→代わりの提案
断る連絡は、次の3つの順で組み立てると、短くても角が立ちにくくなります。
- 受け止める:依頼の内容を一文で言い直す。「◯◯の件、承知しました」「ご相談ありがとうございます」
- 理由を事実で示す:契約の範囲、稼働の上限、今の作業の期限のどれに当たるかを書く
- 代わりの提案を添える:時期をずらす、一部だけ受ける、別の人や窓口につなぐ、条件を決めてから受ける
理由に使う言葉は、相手が確かめられるものにします。「忙しいので」「手が回らないので」は、相手から見ると判断の材料になりません。「今月は◯日までに△△の結合テストを終える予定で、稼働も上限に近いため」のように、期限と稼働を並べると、相手も優先順位の話として受け止めやすくなります。
理由の選び方
| 理由 | 向いている場面 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 契約の範囲 | 役割や工程そのものが違う依頼 | 「この作業は今回の契約の業務範囲に含まれていないため」 |
| 稼働の上限 | 範囲内でも量が増え続けている | 「今月の稼働が契約の上限に近づいているため」 |
| 今の作業への影響 | 期限の近い作業がある | 「受けると△△の期限に間に合わなくなるため」 |
| 専門外 | 経験のない技術や業務 | 「この領域は経験が浅く、品質をお約束できないため」 |
理由は一つに絞るほうが伝わります。いくつも並べると、言い訳を重ねているように読まれがちです。
場面ごとの言い方の例
以下は架空の例です。そのまま使うより、案件の言葉に置き換えて使ってください。
チームのメンバーから、チャットで頼まれたとき
社員のメンバーから気軽に頼まれる依頼は、断るより「窓口につなぐ」形が向いています。業務委託では、作業の割り振りは契約の窓口になっている担当者と決めるのが筋だからです。
「◯◯さん、ご連絡ありがとうございます。この作業は私の担当範囲から外れるので、進め方を△△さん(窓口の担当者)と相談させてください。△△さんの判断が出たら、改めてご連絡します。」
会議の場で、その場で頼まれたとき
会議の場で即答すると、引き受けたと受け取られやすくなります。その場では持ち帰り、会議のあとに文字で返します。
「今の作業との兼ね合いを確認して、本日中にお返事します。」
そのうえで、会議後に「先ほどの◯◯の件、今月は△△を優先する必要があるため、来月からの対応でもよいかご相談させてください」と送ります。
期限の近い作業を抱えているとき
「今週は△△のリリース準備を最優先で進めています。◯◯を先にする場合は△△が◯日ほど遅れる見込みです。どちらを優先するか、ご判断いただけますか。」
優先順位を決めるのは発注側です。自分で決めずに、選んでもらう形にすると、断るというより判断材料を渡す連絡になります。
夜間・休日に連絡が来たとき
時間外の依頼は、すぐに反応しないのが基本です。取り決めのない時間外の対応を続けると、それが前提になっていきます。翌稼働日の朝に「昨夜のご連絡を拝見しました。本日の午前中に確認して、◯時までにご連絡します」と返します。緊急時の連絡の取り方を決めていない場合は、この機会に決めておくと、次から迷わずに済みます。連絡の時間帯の決め方は時間管理の記事で扱っています。
小さな依頼が何度も重なるとき
一つひとつは小さくても、続くと稼働を圧迫します。そのつど断るより、まとめて話す場を持つほうが伝わります。
「ここ数週間、◯◯や△△など当初の範囲外の作業が増えており、今月は稼働の上限を超えそうです。今後の進め方を一度ご相談させてください。」
週報を出している案件なら、範囲外の作業と時間を週報に書いておくと、話し合いのときに数字で示せます。
断りにくいときに知っておきたいこと
断ることは契約違反ではない
業務委託では、契約で決めた業務を行う義務はありますが、契約にない作業を引き受ける義務はありません。範囲外の依頼を断っても、それだけで契約に反することにはなりません。
一方で、範囲内の作業を断る場合は話が別です。契約の業務範囲にはっきり入っている作業を断ると、契約を果たしていないと受け取られます。範囲内で量が多すぎる場合は、断るのではなく、稼働や期限の調整として相談します。
費用を負担しない内容の変更は、法律でも問題になり得る
フリーランス法では、従業員を使う発注者が1か月以上の業務委託をする場合に、フリーランスに責任がないのに給付の内容を変えさせ、その費用を負担しないことを禁じています。公正取引委員会のQ&Aでは、発注内容を変更したり、追加の作業を求めたりして、生じた費用や損失を負担しない場合が問題になるとされています。どの行為が禁止されているかは7つの禁止行為の記事にまとめています。
ただし、法律の話を断りの文面に持ち出すのは、関係がこじれやすい方法です。まずは契約の範囲と稼働の話で伝え、それでも話が進まないときの備えとして知っておく程度がちょうどよい使い方です。
指示の受け方そのものが気になるとき
発注側の社員から直接、細かな作業を次々に指示され、断る余地がない状態が続く場合は、追加の依頼の問題ではなく、働き方の形の問題かもしれません。準委任の契約で、発注側が直接指揮命令をする形が強まると、契約と実態がずれていきます。気になるときは偽装請負の記事も確かめてください。
エージェント経由の案件で断るとき
エージェントを通して参画している場合、契約の当事者はフリーランスとエージェントです。範囲外の依頼を受けるかどうかは、最終的に契約の変更が絡むため、取引先の担当者とだけで決めないほうが安全です。
現場では、「確認して改めてお返事します」と受け止めたうえで、エージェントの担当者に依頼の中身を共有します。現場での断り方そのものは、これまでの型と同じです。条件を変えて受ける場合は、契約の窓口を通して個別契約を直してもらいます。
断ったあとに気をつけること
断ったあとは、気まずさから連絡を減らしたくなりますが、普段どおりのやり取りを続けるほうが関係は保たれます。代わりに提案したこと(時期をずらす、一部を受けるなど)は、約束として守ります。
また、同じ種類の依頼が続くときは、プロジェクト側に人手や役割の不足がある可能性があります。契約の更新の時期に、役割を広げて条件を決め直すという選択もあります。更新の話し合いは契約更新の記事、報酬の相談は単価交渉の記事で扱っています。
よくある質問
断ったら契約を更新してもらえなくなりませんか?
更新の判断はさまざまな事情で決まるため、断ったことだけで決まるとは限りません。理由と代わりの提案を添えて断れば、「範囲を守って仕事をする人」と受け止められることも多くあります。黙って引き受け続けて品質や期限が崩れるほうが、評価への影響は大きくなりがちです。
一度引き受けた追加の作業を、途中で断ることはできますか?
引き受けた時点で、その作業について合意したと受け取られることがあります。途中でやめる場合は、ここまでの作業の状態と、やめる理由、引き継ぎの方法を示して相談します。今後は範囲と条件を決めてから受ける形に切り替えましょう。
断る理由を正直に書くと角が立ちそうです。ぼかしてもよいですか?
ぼかした理由は、相手が判断に使えないため、同じ依頼が繰り返される原因になります。感情や不満ではなく、契約の範囲・稼働・期限といった事実を短く書けば、正直に書いても角は立ちにくくなります。言い回しは丁寧にし、中身ははっきりさせるのが基本です。
参考にした公的情報・資料
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