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フリーランス新法・下請法フリーランスへのハラスメント対策|発注側の義務と相談先
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランス新法(第14条)では、従業員を使う発注者に、フリーランスへのセクハラ・妊娠出産に関するハラスメント・パワハラを防ぐため、相談に応じる体制の整備などの措置を義務づけています。フリーランスが相談したことや、事実確認に協力したことを理由に、契約を解除するなどの不利益な扱いをすることも禁止されています。
困ったときは、まず発注者の相談窓口へ。解決しない場合や窓口に言いにくい場合は、都道府県労働局やフリーランス・トラブル110番に相談できます。2026年10月時点の厚生労働省の指針などをもとに整理します。
義務を負う発注者と守られる人
義務を負うのは「従業員を使う発注者」
ハラスメント対策の義務を負うのは、特定業務委託事業者、つまり従業員を使用する個人や、役員が2人以上いるか従業員を使用する法人です。従業員のいないフリーランス同士の取引には、この義務はかかりません。
中途解除の30日前予告などと違い、契約期間の長さによる条件はありません。1回限りの短い業務委託でも対象です。
守られるのは「特定受託業務従事者」
第14条で守られるのは、従業員を使っていない個人のフリーランスと、一人社長の会社の代表者です。法律では「特定受託業務従事者」と呼んでいます。
業務委託契約を結んでいても、実態が労働者と判断される場合は、フリーランス新法ではなく、労働者として労働関係の法律で保護されます。働き方が会社員とほとんど変わらない場合は偽装請負の記事もご覧ください。
対象になる3つのハラスメント
| 種類 | 法律上の内容(第14条第1項) |
|---|---|
| セクシュアルハラスメント | 性的な言動への対応によって業務委託の条件で不利益を与える、または性的な言動で就業環境を害すること |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント | 妊娠・出産に関する事由についての言動で就業環境を害すること |
| パワーハラスメント | 取引上の優越的な関係を背景とした、業務の遂行に必要かつ相当な範囲を超えた言動で就業環境を害すること |
パワハラは、①取引上の優越的な関係を背景とした言動であること、②業務を遂行するうえで必要かつ相当な範囲を超えていること、③就業環境が害されること、の3つをすべて満たすものとされています。
セクハラについては、発注者の従業員や代表者だけでなく、一緒に業務を進める他の事業者や顧客など、契約を進めるうえで関わる人からの言動も対象になるとされています。
パワハラにあたる例・あたらない例
厚生労働省の指針は、6つの類型ごとに例を挙げています。フリーランスの仕事で起きやすいものを抜き出すと、次のとおりです。
| 類型 | あたると考えられる例 | あたらないと考えられる例 |
|---|---|---|
| 精神的な攻撃 | 納品したのに正当な理由なく報酬を払わない・減額すると、度を超して繰り返し示唆する。必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返す | 契約内容が実施されず再三注意しても改善されない場合に、一定程度強く注意する。取引条件の変更について協議する |
| 人間関係からの切り離し | 発注者の従業員が集団で無視し、事業所で孤立させる | 契約を適切に進めるため、短期間集中的に別室で研修をする |
| 過大な要求 | 明確な検収基準を示さず、嫌がらせで受領を何度も拒み、やり直しを強要する。業務と関係のない私的な雑用を強制する | 繁忙期に、契約の範囲内で通常より一定程度多い業務を頼む。検収基準を示したうえで、基準に達しない部分のやり直しを指示する |
| 過小な要求 | 気に入らないフリーランスに、嫌がらせで契約上予定していた業務を与えない | — |
指針は、これらは限定列挙ではなく、個別の事案によって判断が変わり得るとしています。報酬の不払いや減額をともなう場合は、ハラスメントにあたるだけでなく、支払期日の義務(第4条)や禁止行為(第5条)の違反にもなり得るとされています。
Q&Aでは、業務を行う場所だけでなく、業務に関連する懇親会や移動中の言動も対象になり得るとしています。
発注者が講じなければならない措置
指針では、発注者が講じるべき措置を4つのまとまりで示しています。
- 方針の明確化と周知:ハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、契約担当者などに周知する。行為者に厳正に対処する方針を就業規則などに定める
- 相談体制の整備:相談窓口を設けてフリーランスに周知し、窓口の担当者が適切に対応できるようにする
- 事後の迅速・適切な対応:事実関係を迅速・正確に確認し、被害者への配慮の措置と行為者への措置をとり、再発防止策を講じる
- あわせて講じる措置:相談者・行為者のプライバシーを守る。相談や事実確認への協力、行政機関への申出を理由に不利益な扱いをしない旨を定めて周知する
相談窓口は契約書やメールで知らされる
相談窓口は、外部の機関に委託しても、担当者を決める形でもかまいません。従業員向けの窓口をフリーランスも使えるようにすることも認められています。周知の方法としては、業務委託の契約書やメール、フリーランスが定期的に見るイントラネットに窓口を書くことが例に挙げられています。
アプリやメールなど対面以外で相談を受け付ける場合は、相談が受理されたことをフリーランスがはっきり認識できる仕組みが必要とされています。契約書や発注メールに相談窓口が書かれているか、一度確認しておきましょう。
客先で働く場合は発注者と現場の連携が求められる
仲介会社などを通じて、元の発注者(元委託事業者)の事業所で働く場合もあります。指針では、元委託事業者にもフリーランスへのハラスメント対策の重要性について理解を求め、連携して対策を行うことが望ましいとしています。Q&Aでも、元委託事業者と連携した対策が効果的で、契約に盛り込むことも考えられるとしています。
ハラスメントを受けたときの動き方
1. 記録を残す
日時、場所、相手、言われたこと・されたこと、その場にいた人をメモに残します。チャットやメールは消される前に保存しておきます。報酬の減額や受領拒否をともなう場合は、発注書や納品の記録も一緒に整理します。
2. 発注者の相談窓口に相談する
契約書などで知らされた窓口に相談します。仲介会社経由で客先に常駐している場合は、契約の相手である仲介会社に伝えるのが基本です。
3. 外部の相談先を使う
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 就業環境の整備(第12〜14条・第16条など)に関する相談・申出の窓口 |
| 厚生労働省の申出受付フォーム | 法律違反の申出をオンラインで行う(公正取引委員会・中小企業庁と共通) |
| フリーランス・トラブル110番 | 弁護士に無料で相談。和解あっせんも利用できる |
法律違反と思われる場合、フリーランスは厚生労働大臣に申し出て、適当な措置を求めることができます(第17条)。発注者は、申出をしたことを理由に不利益な扱いをしてはなりません。厚生労働省の案内では、申出を受けた行政機関は当事者間の仲裁や和解の仲介はしないとされています。話し合いでの解決を目指すなら、フリーランス・トラブル110番の和解あっせんが選択肢になります。相談先の使い分けは相談先の記事で詳しく解説しています。
相談はハラスメント対策がいちばん多い
厚生労働省が公表した令和7年度(2025年度)の都道府県労働局の施行状況では、フリーランス新法に関する相談は2,687件で、内容別ではハラスメント対策に係る体制整備に関する相談が最も多くなっています。申出の受理は291件で、こちらもハラスメント対策の体制整備に関するものが最も多いとされています。同年度、労働局は2,651事業所を調査し、違反が確認された2,002事業所に5,555件の是正指導を行いました。
なお、指針は2026年2月26日に改正されています。発注者側の対応は今後も見直される可能性があるため、最新の内容は厚生労働省のページでご確認ください。
よくある質問
客先の社員からのパワハラは、誰に相談すればよいですか?
まずは契約の相手である発注者(仲介会社経由なら仲介会社)の相談窓口に伝えましょう。指針では、元の発注者の事業所で働く場合、元の発注者とも連携して対策をとることが望ましいとしています。窓口で解決しない場合は、都道府県労働局やフリーランス・トラブル110番に相談できます。
厳しく注意されただけでもパワハラになりますか?
厳しい注意がすべてパワハラになるわけではありません。指針では、契約内容が実施されず再三注意しても改善されない場合に一定程度強く注意することは、あたらない例とされています。一方、人格を否定する言動や、必要以上に長時間の叱責を繰り返すことは、あたると考えられる例です。
発注者が個人のフリーランスの場合も、ハラスメント対策の義務はありますか?
従業員のいない個人の発注者には、第14条の体制整備の義務はかかりません。ただし、それはハラスメントが許されるという意味ではありません。取引上のトラブル全般は、弁護士に無料で相談できるフリーランス・トラブル110番に相談できます。
参考にした公的情報・資料
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針(厚生労働省)
- フリーランス・事業者間取引適正化等法 パンフレット(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)
- フリーランス法に関するQ&A(公正取引委員会)
- フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)
- フリーランス・事業者間取引適正化等法違反の申出について(厚生労働省)
- 令和7年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況(厚生労働省)
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。