フリーランスの住宅ローン審査で見られること|所得の証明・返済負担率・準備の順番
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランスの住宅ローン審査で中心になるのは、確定申告にもとづく「所得」が、公的な書類で何年分確かめられるかです。会社員なら源泉徴収票の給与収入で見られるところを、フリーランスは納税証明書や確定申告書の写しで、売上から経費を引いた後の所得で見られます。
そのうえで、年収に対する返済額の割合(返済負担率)、ほかの借入れ、税金をきちんと納めているかが確かめられます。審査の基準は金融機関ごとに違い、公表されていない部分も多いため、この記事では公的な案内で確かめられることを中心に、申し込む前に整えておきたい点を整理します(2026年10月時点)。
会社員と比べて見られ方が違う点
「年収」は売上ではなく所得
住宅金融支援機構の【フラット35】の利用条件では、審査で使う年収は、原則として申込年の前年の収入を証明する公的な書類に書かれた金額です。給与収入だけの人は給与収入の金額、そうでない人は事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得・給与所得の合計とされています。
フリーランスの場合、売上ではなく、経費や青色申告特別控除を差し引いた事業所得が年収として扱われるということです。売上が同じでも、経費が多い人ほど審査上の年収は小さくなります。
1年分ではなく、続いているかを見られる
【フラット35】の必要書類の案内では、所得を証明する書類は借入申込年の前年と前々年の分とされています。民間の金融機関でも、複数年分の申告書を求められることが一般的です。独立して1年目で確定申告がまだの時期は、所得を証明する書類そのものがそろいません。
書類の種類が多い
会社員は勤務先が発行する書類で足りることが多いのに対し、フリーランスは自分で税務署や市区町村から書類を取り寄せます。どの書類を何年分求めるかは金融機関によって違うため、申し込む前に一覧をもらっておくと準備が進めやすくなります。
提出を求められやすい書類
【フラット35】の案内では、給与所得以外の収入がある人の所得の書類は「納税証明書(所得金額用)および確定申告書(写)等」です。あわせて、必要な書類は取扱金融機関によって違い、住民票などほかの書類が要る場合や、審査の途中で追加の書類を求める場合があるとされています。
| 書類 | 取り寄せ先 | 準備のポイント |
|---|---|---|
| 確定申告書の写し | 自分の控え | 決算書(青色申告決算書・収支内訳書)も一緒に用意する |
| 納税証明書 | 税務署(e-Taxでも請求できる) | 所得金額用(その2)と納税額用(その1)を求められることがある |
| 住民税の課税証明書 | 市区町村 | 金融機関によって求められる |
| 本人確認・住民票 | 市区町村など | 物件の書類とあわせて求められる |
申告書の控えに受付印は押されない
国税庁は、令和7年1月から、書面で提出した申告書の控えに収受日付印を押していません。申告したことを確かめる方法として、e-Taxで申告した場合の受信通知(メッセージボックスで確認できる)、納税証明書、税務署で自分の申告書を見られる申告書等閲覧サービスを案内しています。国税庁は、金融機関などにも、控えへの収受日付印を求めないよう周知しています。
e-Taxで申告している人は、受信通知を印刷やPDFで保存しておくと、提出を求められたときに慌てずに済みます。
納税証明書の取り方
国税庁の案内では、納税証明書は税務署の窓口・郵送のほか、e-Taxで請求できます。e-Taxで電子納税証明書(PDF)を受け取る方法、オンラインで請求して郵送や窓口で受け取る方法があります。手数料は窓口・郵送が1枚400円、オンライン請求が370円です。電子の証明書を受け付けるかは提出先によって違うため、金融機関に確かめてから請求します。
返済負担率の考え方
返済負担率は、年収に占める年間の返済額の割合です。【フラット35】では、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下が基準とされています。
この返済額には、申し込む住宅ローンだけでなく、ほかの住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、クレジットカードのキャッシングや分割払い・リボ払いを含むカードローンなども含まれます。仕事用のパソコンを分割払いで買っている場合も、返済額として数えられることがあります。
計算の流れを仮の数字で示します。
- 審査上の年収(前年の所得の合計)… 仮に600万円
- 返済負担率の基準 … 35%
- 年間の返済額の上限 … 600万円×35%=210万円
- 自動車ローンを年30万円返している場合、住宅ローンに回せるのは年180万円まで
これは【フラット35】の基準をあてはめた計算の例で、実際にいくら借りられるかは、金利や返済期間、金融機関の審査で変わります。民間の住宅ローンは金融機関ごとに独自の基準を使っています。また、基準の上限まで借りられることと、無理なく返せることは別の話です。案件の切れ目でも返せる額かを、自分の貯蓄と合わせて考えます。
申し込む前に整えておくこと
経費と所得のバランス
経費を計上すれば所得税や住民税は下がりますが、審査上の年収も下がります。これは節税と審査が逆の方向に働くということです。ただし、審査のために経費を計上しない、所得を多く申告するといったことは、税の申告として正しくありません。事業に必要な支出を正しく計上したうえで、その所得で借りられる範囲を考えるのが基本です。
家事按分の割合が実態より大きくなっていないかも、この機会に見直しておきます。按分の考え方は家事按分の記事で解説しています。
税金と保険料の納付状況
納税証明書には、納めるべき税額と納めた税額、未納の税額が書かれます(その1)。税金や国民健康保険料・国民年金保険料に滞納があると、審査で説明を求められることがあります。納付が遅れがちな人は、納付用のお金を先に取り分けておく仕組みを作っておきましょう。考え方は税金と保険料の積み立て方の記事にまとめています。
ほかの借入れとカードの利用
返済負担率にはカードの分割払いやリボ払いも含まれます。申し込む前に、残っている分割払いを確かめておきます。
独立前に借りるか、独立後に借りるか
会社員のうちに借りる場合は、給与収入で審査を受けられます。ただし、返済は独立後も続きます。独立後の収入の見通しと、案件が途切れた月の返済をどうするかを先に考えておく必要があります。借入れ後に働き方が変わった場合の扱いも、ローンの契約書で確かめておきましょう。
法人化している場合
法人化して役員報酬を受け取っている場合は、本人の給与所得と会社の決算の両方を見られることがあります。役員報酬の決め方は役員報酬の記事を、法人化の時期の考え方は法人化のタイミングの記事をご覧ください。
申し込みまでの順番
- 金融機関に必要書類の一覧をもらう:何年分の申告書と、どの納税証明書が要るかを確かめる
- 申告書と決算書をそろえる:e-Taxの受信通知も保存しておく
- 納税証明書・課税証明書を取り寄せる:電子の証明書を受け付けるかも確かめる
- 返済負担率を自分で計算する:ほかの借入れも含めて、上限と無理なく返せる額の両方を出す
- 契約の見通しを整理する:今の案件の契約期間と、次の更新の見込みを把握しておく
よくある質問
独立1年目でも住宅ローンは組めますか?
確定申告をしていない時期は、所得を証明する公的な書類がそろわないため、審査を受けられる金融機関は限られます。【フラット35】の案内でも、所得の書類は前年と前々年分とされています。独立1年目の扱いは金融機関によって違うため、申し込む前に確かめてください。
青色申告特別控除を受けると審査で不利になりますか?
【フラット35】で年収とされるのは事業所得などの合計で、青色申告特別控除は事業所得を計算するときに差し引かれます。そのため、審査上の年収はその分小さくなります。ただし、控除を受けないことで税金が増える影響もあるため、損得は税理士などの専門家にご相談ください。
納税証明書はどの種類を取ればよいですか?
所得を示す「その2(所得金額用)」と、納税額を示す「その1(納税額用)」を求められることが多くあります。必要な年分と種類は金融機関によって違うため、指示に合わせて請求します。e-Taxで請求すると、窓口に行かずに取り寄せられます。
参考にした公的情報・資料
- 【フラット35】ご利用条件(住宅金融支援機構)
- 【フラット35】融資手続・必要書類(住宅金融支援機構)
- 納税証明書の交付請求手続(国税庁)
- 令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。