海外の取引先から報酬を受け取るときの税金|所得税・消費税・為替換算の扱い
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
日本に住むフリーランスが海外の会社から報酬を受け取る場合、所得税は国内の取引先からの報酬と同じように事業所得として確定申告します。日本の居住者は、所得がどこで生じたかを問わず、すべての所得に課税されるためです。
一方、消費税は扱いが変わります。国外の事業者に対する役務の提供は、多くの場合「輸出免税」か「不課税」になり、売上に消費税を上乗せしないのが一般的です。このほか、外貨の報酬を円に直す方法と、相手の国で税金を差し引かれたときの手続きを押さえておきます(2026年10月時点の国税庁の情報にもとづきます。タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令による内容です)。
この記事は、日本に住んだまま海外の取引先と直接契約する人向けです。自分が海外に住んで日本の案件を受ける場合は、居住者か非居住者かの判定から考える必要があるため、海外から日本の案件を受ける記事をご覧ください。
所得税は国内の報酬と同じく確定申告する
国税庁の案内では、居住者(非永住者以外)は、所得が生じた場所が日本の内外を問わず、すべての所得に課税されます。海外の会社から受け取ったシステム開発やコンサルティングの報酬も、国内の報酬と合わせて事業所得として申告します。
海外の取引先は、日本の税金を源泉徴収しません。国内の取引先から報酬を受け取るときのような差し引きがないため、年間の税額をまるごと確定申告で納めることになります。入金のたびに、所得税と住民税の分を取り分けておくと、納付の時期にあわてずに済みます。
| 項目 | 国内の取引先 | 海外の取引先 |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 事業所得(雑所得のこともある) | 同じ |
| 日本の源泉徴収 | 報酬の種類によってはある | ない |
| 相手の国での税金 | ない | 差し引かれることがある |
| 確定申告 | 必要 | 必要(外国税額控除を使うこともある) |
経費の考え方も国内の取引と変わりません。海外への送金で差し引かれる手数料や、海外の決済サービスの手数料は、業務に必要な費用として扱います。報酬から差し引かれた形で入金される場合は、差し引かれる前の金額を売上にし、手数料を経費に分けて記録します。
外貨の報酬を円に直す方法
ドルやユーロで報酬を受け取る場合は、帳簿と申告書に円で記録します。所得税基本通達では、外貨建取引の円換算は、取引を計上すべき日の電信売相場と電信買相場の仲値(TTM)によるのが原則です。
事業所得の計算では、継続して使うことを条件に、次の方法も認められています。
- 売上などの収入は、取引日の電信買相場(TTB)で換算する
- 取引日の前月末や当月初めの相場、前月の平均相場など、合理的な相場を継続して使う
- 取引日に相場がない日は、その前の最も近い日の相場を使う
相場は、原則として主に取引している金融機関のものを使います。どの方法を選んでも、一度決めた方法を毎年続けることが大切です。月によって有利な相場を選ぶような使い分けはできません。
外貨で表示されていても円で払われる取引
通達では、金額が外貨で表示されていても、支払いが円で行われることになっている取引は、外貨建取引にあたらないとされています。契約書の通貨と、実際に支払われる通貨の両方を確かめておきましょう。
請求時と入金時で相場が違う場合
請求した日に売上を計上し、入金が翌月になると、その間に為替が動いて入金額が変わります。この差額は為替差損益として扱うのが一般的です。外貨のまま口座に置いておく場合などは処理が複雑になるため、取引が多い人は税理士に相談しておくと安心です。
消費税は「どこで役務を提供したか」で決まる
課税事業者(インボイス登録をしている人を含む)の場合、海外の取引先への売上に消費税がかかるかを判定する必要があります。免税事業者のままなら、そもそも消費税の申告はありません。
役務の提供は、提供した場所で判定する
国税庁の案内では、役務の提供が国内取引か国外取引かは、原則としてその役務の提供が行われた場所で判定します。国外取引であれば消費税は課税されません(不課税)。日本の自宅で作業して海外の会社に納品する場合、作業の場所は国内なので、まず国内取引にあたるかを考えます。
非居住者への役務の提供は輸出免税になることが多い
国内取引であっても、非居住者に対する役務の提供は、一般に輸出免税の対象になり、消費税が免除されます。ここでいう非居住者は外為法の定義で、日本に主たる事務所がない外国の法人などが該当します。
ただし、次のような場合は免税になりません。
- 相手が日本に支店や出張所を持っていて、その支店などを通じた取引になる場合
- 国内での飲食・宿泊や、国内にある資産の運送・保管など、相手が国内で直接便益を受けるもの
輸出免税を受けるには、取引が輸出取引等であることを示す書類を残す必要があります。役務の提供の場合は、一定の事項が書かれた契約書などを7年間保存します。英文の契約書や発注書、請求書の控えをまとめておきましょう。
インターネットを通じたサービスは判定の基準が違う
国税庁の案内では、電子書籍・音楽・広告の配信など、インターネットを介して行われる「電気通信利用役務の提供」は、サービスを受ける側の住所等で国内取引かどうかを判定します。海外の会社に提供すれば国外取引となり、不課税です。
自分の仕事が「輸出免税」と「電気通信利用役務の提供による不課税」のどちらにあたるかで、消費税の申告書への書き方が変わります。開発の受託、オンラインでの技術支援、自社サービスの利用料など、契約の中身で判断が分かれるため、迷う場合は税務署か税理士に確かめてください。消費税の申告の流れは消費税の納税の記事で解説しています。
相手の国で税金を差し引かれたとき
海外の取引先によっては、相手の国の法律にもとづいて報酬から税金を差し引いて支払うことがあります。この場合、日本と相手の国の両方で同じ所得に課税されることになるため、次の2つの方法で調整します。
1. 租税条約で相手の国の税金を減らす
日本と租税条約を結んでいる国では、条約にもとづいて相手の国での課税が減免されることがあります。その手続きで、相手の国の当局から日本の居住者であることの証明を求められた場合は、所轄の税務署で居住者証明書を請求できます。
国税庁の案内では、居住者証明書(2部)と交付請求書を、郵送か来署で税務署(管理運営部門)に出します。提出先の国が様式を決めている場合は、原則としてその様式を使い、外国語の書類には和訳を添えます。どの書類が必要かは相手の国と取引先によって違うため、取引先の経理担当に確かめてから請求します。
2. 日本の確定申告で外国税額控除を使う
相手の国で納めた所得税にあたる税金は、日本の確定申告で外国税額控除として、一定の限度額の範囲で日本の所得税から差し引けます。限度額は、その年の所得税額に「国外所得金額÷所得総額」の割合をかけて計算する仕組みです。
注意したいのは、租税条約で減免を受けられる部分を超えて差し引かれた税金は、外国税額控除の対象にならないことです。条約の手続きをせずに多く差し引かれた分は、日本では控除できず、相手の国での還付の手続きが必要になることがあります。外国税額控除は計算が複雑なため、使う年は税理士に相談するのが現実的です。依頼の考え方は税理士の記事をご覧ください。
海外の取引先と契約するときに決めておくこと
税金の扱いは契約の内容で変わるため、契約の段階で次の点を決めておきます。
- 報酬の通貨と支払方法:外貨か円か。送金か決済サービスか
- 手数料の負担:送金手数料や決済サービスの手数料をどちらが負担するか
- 相手の国での源泉徴収の有無:差し引かれる場合、租税条約の手続きに何が必要か
- 作業の場所と提供の形:日本で作業して納品するのか、インターネット上のサービスとして提供するのか
- 相手の拠点:日本に支店や子会社があるか。契約の相手が日本の法人なら、国内の取引先として扱う
国内の取引での振込手数料の考え方は振込手数料の記事にまとめています。海外の取引先との契約は、日本のフリーランス新法の対象かどうかも含めて国内の契約とは前提が違うため、条件を書面で残しておくことが大切です。
よくある質問
海外の取引先への請求書に、日本の消費税を上乗せすべきですか?
非居住者に対する役務の提供で輸出免税にあたる場合や、国外取引として不課税になる場合は、消費税を上乗せしないのが一般的です。ただし、相手が日本に支店を持っている場合など、免税にならない取引もあります。取引の形で判断が分かれるため、迷う場合は税務署か税理士にご確認ください。
海外の取引先からの報酬は、免税事業者かどうかの判定に影響しますか?
消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高などで判定します。海外の取引先への売上が輸出免税か不課税かによって、判定での数え方が変わることがあります。売上の規模が1,000万円に近づいてきたら、前提を税務署・税理士に確かめてください。
為替の相場は、毎回いちばん有利な日のものを使ってもよいですか?
使えません。所得税基本通達では、原則として取引日の電信売買相場の仲値(TTM)を使い、ほかの方法は継続して適用することが条件とされています。最初に決めた方法を毎年続けてください。
参考にした公的情報・資料
- No.2010 納税義務者となる個人(国税庁)
- No.6210 国外取引(国税庁)
- No.6551 輸出取引の免税(国税庁)
- No.6567 非居住者に対する役務の提供(国税庁)
- No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係(国税庁)
- 所得税基本通達 法第57条の3(外貨建取引の換算)関係(国税庁)
- No.1240 居住者に係る外国税額控除(国税庁)
- No.9210 居住者証明書の請求(国税庁)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。