契約不適合責任とは|請負で負う責任の範囲と期間、契約書での決め方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
契約不適合責任とは、請負で引き渡した成果物が、種類・品質・数量について契約の内容に合っていないときに、請け負った側が負う責任です。注文者は、修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除を求めることができます。
民法では、注文者が不適合を知ってから1年以内に通知しなければ、原則としてこれらを求められなくなります。ただし、期間や範囲は契約で変えられるため、実際にどこまで責任を負うかは契約書の条項で決まります。この記事で引用する条文は2026年10月時点のものです。
「瑕疵」から「契約の内容に適合しない」へ
以前の民法では「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年4月施行の改正で、成果物が「契約の内容に適合しない」かどうかで判断する仕組みに改められました。契約書によっては今も「瑕疵担保」という言葉が残っていますが、読むときの軸は同じです。
ポイントは、何が「契約の内容」かによって、責任の範囲が決まることです。仕様書、要件定義書、画面設計、検査項目など、合意した内容が具体的であるほど、適合しているかどうかの判断がはっきりします。逆に、仕様があいまいなまま納めると、「期待していたものと違う」という主張と争いになりやすくなります。
請負の条文には、売買の規定が準用されます(民法第559条)。そのため、請負の契約不適合責任を読むときは、売買の条文(第562条〜第564条)と、請負の条文(第636条・第637条)をあわせて見ることになります。
注文者が求められる4つのこと
| 求められること | 中身 | 根拠となる条文 |
|---|---|---|
| 履行の追完 | 修補(バグ修正など)、代わりの物の引渡し、不足分の引渡し | 民法第562条 |
| 報酬の減額 | 相当の期間を決めて追完を求めても応じないときなどに、不適合の程度に応じて減額 | 民法第563条 |
| 損害賠償 | 不適合によって生じた損害の賠償 | 民法第564条・第415条 |
| 契約の解除 | 催告しても履行されないときなど | 民法第564条・第541条・第542条 |
追完の方法は、請け負った側が選べる場合がある
追完について、民法第562条は、注文者に不相当な負担を課するものでなければ、請け負った側が注文者の求めた方法と異なる方法で追完できるとしています。たとえば、修正の方法を相談して決める余地があるということです。
減額は、原則として「催告」が先
報酬の減額は、原則として、注文者が相当の期間を定めて追完を求め、その期間内に追完されなかったときに請求できます(第563条第1項)。ただし、追完ができないときや、追完を拒む意思をはっきり示したときなどは、催告なしに減額を求められます(同条第2項)。
損害賠償には「責めに帰すべき事由」が必要
損害賠償は、債務不履行の一般的なルール(第415条)によります。不履行が契約や取引上の社会通念に照らして、請け負った側の責めに帰することができない事由によるものであれば、賠償の責任は負いません。賠償の範囲と上限の考え方は損害賠償の条項の記事で詳しく解説しています。
責任を負わない場面
民法第636条は、注文者が提供した材料の性質や、注文者が与えた指図によって生じた不適合については、注文者は追完・減額・損害賠償・解除を求められないとしています。ただし、請け負った側がその材料や指図が不適当だと知りながら告げなかったときは、この限りではありません。
ITの仕事に置き換えると、発注者が指定した設計方針やライブラリ、発注者が用意したデータが原因で起きた不具合は、この考え方に関わります。気づいた問題点は、その時点でメールなどで指摘しておくことが、後で責任の範囲を説明する材料になります。
また、不適合が注文者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、追完や減額を求めることはできません(第562条第2項・第563条第3項)。
期間の制限:不適合を知ってから1年以内の「通知」
民法第637条第1項では、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を通知しないと、追完・減額・損害賠償・解除を求めることができなくなります。押さえておきたいのは次の3点です。
- 起算点は「注文者が知った時」:引渡しから1年ではありません。民法のままだと、引渡しから時間がたっていても、知った時から1年は通知できることになります
- 必要なのは「通知」:期間内に請求まで済ませる必要はなく、不適合がある旨を知らせれば足ります
- 対象は種類・品質の不適合:第637条は種類・品質に関する規定で、数量の不足は含まれていません
さらに、引渡しの時に請け負った側が不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この1年の制限は適用されません(第637条第2項)。
通知した後の権利は、一般の消滅時効にかかります。民法第166条では、債権は、権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年行使しないと時効で消滅するとされています。
契約で期間や範囲はどう変わるか
契約不適合責任の規定は、当事者の合意で変えることができます。情報処理推進機構(IPA)の「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」の契約不適合責任の条項は、次のように組み立てられています。
- 検収完了後に、仕様書との不一致(バグを含む)が見つかった場合に追完を求められる
- 不適合があっても契約の目的を達することができ、追完に過分の費用がかかる場合は、追完の義務を負わない
- 損害賠償は、受注者の責めに帰すべき事由による不適合に限る
- 責任を負うのは、検収完了後◯か月(または◯年)以内に通知された場合に限る(あわせて「知った時から◯か月以内」とする案もある)
- ただし、受注者が検収時に不適合を知っていたか重大な過失で知らなかった場合や、故意・重大な過失による不適合の場合は、この期間の制限を受けない
- 発注者の提供した資料や指示によって生じた不適合には適用しない
月数は空欄になっていて、当事者が決める形です。フリーランスの契約でよく見る書き方と、読むときのポイントを並べます。
| 書き方の例 | 読むときのポイント |
|---|---|
| 「検収完了後◯か月以内に通知されたものに限る」 | 起算点が検収なので、終わりの時期が見通せる |
| 期間の定めがない | 民法どおり「知った時から1年以内の通知」になる |
| 「無償で修補する」とだけ書かれている | 期間の定めがあるか、減額・賠償との関係はどうか |
| 「乙は一切の不具合について責任を負う」 | 指示や提供資料が原因の不具合まで含まれていないか |
不当な「やり直し」との関係
フリーランス新法では、従業員を使う発注者が1か月以上の業務委託をする場合、費用を負担しないまま不当にやり直しをさせることが禁止されています。考え方は、通常の検査で見つけられない不適合について、受領後1年を経過した場合は、費用を全額負担しないままやり直しを求めることは認められないとしています。ただし、発注者が自分の顧客に1年を超える契約不適合責任の期間を定めていて、それに応じた期間をあらかじめフリーランスとの間で定めている場合は除かれます。禁止行為の全体は7つの禁止行為の記事をご覧ください。
準委任なら契約不適合責任は負わないのか
準委任は、仕事の完成ではなく業務を行うことを約束する契約で、受けた側が負うのは善良な管理者の注意義務(民法第644条)です。請負の第636条・第637条は、仕事の目的物を引き渡す請負についての規定です。
ただし、成果に対して報酬を払う成果完成型の準委任や、契約書で「成果物に不具合があれば修補する」と定めている場合は、請負に近い責任を負うことがあります。契約の名前ではなく、条項の中身で確かめてください。違いは準委任と請負の記事で解説しています。
署名前に確認したいチェックリスト
- 契約の型は請負か。準委任でも成果物の修補義務の条項があるか
- 「契約の内容」となる仕様書・検査項目が特定されているか
- 責任の期間の起算点(検収完了か、知った時か)と長さ
- 修補だけか、減額・損害賠償・解除まで含むか
- 損害賠償に帰責事由と上限の定めがあるか
- 発注者の指示や提供資料による不適合が除かれているか
- 検収の手続きがはっきりしているか(検収の記事)
個別の条項の有効性や、すでに起きた不具合の責任の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
見つかったバグはすべて契約不適合になりますか?
すべてではありません。基準になるのは、仕様書など合意した「契約の内容」に合っているかどうかです。仕様に書かれていない動きや、後から出た要望への対応は、不適合ではなく追加の依頼にあたることがあります。どちらかで争いになったときは、仕様書や当時のやり取りが判断の材料になります。
納品から1年以上たってから修正を求められました。応じる必要はありますか?
民法の期間は「注文者が不適合を知った時から1年以内の通知」なので、納品から1年たっただけでは期間が過ぎたとは限りません。契約で「検収完了後◯か月以内」などと定めている場合は、その定めが基準になります。契約の条項と、相手がいつ知ったかによって結論が変わるため、具体的な事案は専門家にご相談ください。
契約不適合で損害賠償を求められたときに備える方法はありますか?
まず契約で、損害賠償の上限や範囲を決めておくことが基本です。そのうえで、業務の内容に応じて賠償責任保険を検討する方法があります。補償の対象や免責は保険によって違うため、賠償責任保険の記事もあわせてご覧ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。