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独立・開業の準備

個人事業主とフリーランスの違い|呼び方の意味と、手続きが変わる場面

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

個人事業主は税金の面から見た呼び方で、フリーランスは働き方から見た呼び方です。個人事業主は「法人を作らずに、個人で事業を営む人」を指します。フリーランスは「特定の会社に雇われず、仕事ごとに契約を結んで働く人」を指します。

会社を辞めて個人で業務委託契約を結ぶエンジニアやコンサルは、多くの場合どちらにもあたります。ただし、一人で会社を作って働く人はフリーランスでも個人事業主ではありません。また、従業員を雇っている個人事業主は、フリーランス新法の保護の対象から外れます。必要な手続きは、名乗り方ではなく「個人か法人か」「事業として続けているか」という実態で決まります。この記事では、2つの言葉の違いと、手続きが変わる場面を整理します(2026年10月時点)。

2つの言葉が見ているもの

2つの言葉は、同じ人を別の角度から呼んでいることが多く、どちらが正しいというものではありません。違いを表にすると、次のとおりです。

観点個人事業主フリーランス
何から見た呼び方か税金(所得の区分と申告)働き方(雇われずに契約する)
法人を含むか含まない(個人だけ)一人社長の会社を含めて使われることがある
従業員がいる場合個人事業主のまま一般には「フリーランス」と呼ばれにくい
法律での定め所得税法の「事業所得」などが関係するフリーランス新法が「特定受託事業者」として定義している

日常で使う「フリーランス」という言葉には、どんな場面にも通じる一つの定義があるわけではありません。一方で、法律の保護を受けるかどうかを考えるときは、フリーランス新法の定義が基準になります。

個人事業主は「税金の区分」から見た呼び方

事業所得を得ている個人

国税庁は、事業所得を「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」と説明しています。業務委託でシステム開発やコンサルティングを継続して請け負い、報酬を得ている人は、この事業所得として申告するのが一般的です。個人事業主という言葉は、この「個人で事業所得を得ている人」を指すときに使われます。

個人事業主として求められる手続き

国税庁の案内(2026年10月時点)では、個人で新たに事業を始めた人に、次のような届出が求められています。

届出・申請期限
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)事業を始めた年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告承認申請書(使う場合)原則として青色申告をしたい年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内

開業届は、事業を始めた人が税務署に出す届出です。出したかどうかだけで、所得が事業所得になるかどうかが決まるわけではありません。書き方と出し方は開業届の記事で解説しています。

青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得がある人が使える申告方法です。国税庁によると、正規の簿記で帳簿を付けて期限内に申告するなどの条件を満たすと、最高65万円の青色申告特別控除を受けられます。条件の詳細は青色申告の記事をご覧ください。

確定申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までに行い、納付の期限も3月15日です。

フリーランスは「働き方」から見た呼び方

フリーランス新法の定義

2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、保護の対象を「特定受託事業者」と呼び、次のどちらかにあたる事業者としています(第2条第1項)。

  1. 個人であって、従業員を使用しないもの
  2. 法人であって、代表者のほかに役員がおらず、かつ従業員を使用しないもの

つまり、法律の上では、従業員のいない個人事業主と、従業員のいない一人社長の会社の両方が「フリーランス」にあたります。

「従業員を使用する」の意味

公正取引委員会のQ&Aでは、ここでいう従業員の使用を、1週間の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇うことと説明しています。短い時間や短い期間だけ人を雇っても、従業員を使用していることにはなりません。

そのため、事務を手伝ってもらうために短時間だけ人を雇っている人は、引き続き特定受託事業者にあたる場合があります。どの取引が対象になるかは個別の事情で変わるため、迷うときは公正取引委員会などの窓口にご確認ください。法律の全体像はフリーランス新法の記事で解説しています。

4つの働き方で当てはめてみる

呼び方と手続きの関係は、具体的な働き方に当てはめると分かりやすくなります。

働き方個人事業主かフリーランス新法の特定受託事業者か税金の申告
会社を辞め、個人で業務委託を受けるあたる従業員がいなければあたる所得税の確定申告(事業所得)
一人で会社を作り、会社として業務委託を受けるあたらない代表者のほかに役員・従業員がいなければあたる会社の申告と、役員報酬についての個人の申告
従業員を雇って個人で事業をしているあたるあたらない所得税の確定申告(事業所得)
会社員のまま副業で業務委託を受ける事業所得になるかで分かれる取引の内容による事業所得か雑所得かで扱いが分かれる

会社員の副業は、規模や継続性によって事業所得か雑所得かの判断が分かれます。開業届を出すかどうかの考え方は副業の開業届の記事で整理しています。

一人社長の会社は、税金の上では個人事業主ではありませんが、取引の上ではフリーランス新法の保護を受けられることがあります。会社を作るかどうかの考え方はマイクロ法人の記事と法人化のタイミングの記事をご覧ください。

呼び方によって変わらない手続き

個人で事業をしている限り、自分を個人事業主と呼んでもフリーランスと呼んでも、必要な手続きは同じです。会社員から個人で独立する場合は、主に次のものがあります。

手続きを時系列で並べたものは会社員からフリーランスになる手順の記事にまとめています。

会社にすると変わる手続き

一方、会社を作ると、税金は会社の申告と、役員報酬についての個人の申告に分かれます。社会保険の扱いも個人のときとは変わります。会社を作る前に、手続きと費用の両方を比べておくことをおすすめします。具体的な判断は税理士などの専門家にご相談ください。

名乗り方を決めるときの実務

契約書と請求書は「誰が当事者か」で書く

契約書の当事者欄や請求書の発行者欄には、呼び方ではなく、契約の主体を書きます。個人で契約するなら本人の氏名で、屋号があれば併せて書く形が一般的です。会社で契約するなら会社名と代表者名です。屋号の付け方は屋号の記事で解説しています。

プロフィールやスキルシートでの書き方

名刺やスキルシートでは、「フリーランスのエンジニア」「個人事業主」など、どちらを使っても構いません。読み手が知りたいのは、どんな業務を、どんな契約の形で担ってきたかです。「業務委託で設計からテストまでを担当」のように、契約の形と役割を書く方が伝わります。

よくある質問

開業届を出していなくてもフリーランスと名乗ってよいですか?

名乗ること自体に届出は要りません。ただし、個人で事業を始めた人は、事業を始めた年分の確定申告期限までに開業届を出すことが求められています。また、初年度から青色申告を使いたい場合は、承認申請の期限が開業から2か月以内(1月16日以後の開業)と早いため、開業届とあわせて早めに出しておくと安心です。

法人化するとフリーランスではなくなりますか?

会社の代表者のほかに役員がおらず、従業員も使用していなければ、フリーランス新法の特定受託事業者にあたります。一方、税金の上では個人事業主ではなくなり、会社としての申告が必要になります。呼び方より、契約の名義や請求書の発行者が変わる点に注意してください。

確定申告書や書類の職業欄には何と書けばよいですか?

「フリーランス」「個人事業主」は立場の呼び方なので、職業欄には「ITエンジニア」「ITコンサルタント」など、仕事の内容が分かる言葉を書くのが一般的です。書類ごとに書き方の指示がある場合は、その指示に従ってください。迷うときは提出先の窓口にご確認ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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