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赤字の年の純損失の繰越し|青色申告で3年間繰り越す条件と手続き

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

青色申告をしている年に事業所得が赤字になり、ほかの所得と差し引きしても残った赤字(純損失)は、翌年以後3年間繰り越して、その後の黒字から差し引けます。条件は、赤字の年に確定申告書を出し、その後も毎年続けて確定申告書を出すことです。前年も青色申告をしていれば、繰り越す代わりに前年の所得税を還付してもらう「繰戻し」も選べます(2026年10月時点。国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令)。

「赤字だから申告しなくてよい」と考えて申告を省くと、この繰越しは使えません。この記事では、繰り越せる赤字の範囲、申告の条件、繰戻しとの選び方を順番に整理します。

繰り越せるのは「損益通算しても残った赤字」

国税庁の損失申告用の手引きでは、純損失の金額を「事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失のうち、損益の通算をしてもなお控除しきれない金額」と説明しています。

損益の通算とは、ある所得の赤字を、ほかの所得の黒字から差し引く計算です。事業所得の赤字は、まず給与所得や雑所得などの「経常所得」の黒字から差し引きます。つまり、繰り越せるのは、同じ年のほかの所得と相殺した後に残った分だけです。

状況その年の扱い繰り越せる額
年の途中で退職して独立し、給与所得がある事業の赤字を給与所得から差し引く給与所得で引ききれなかった分
事業所得だけで赤字差し引く相手がない赤字の全額(青色申告の場合)
事業所得が黒字損失はないなし

独立した年は、会社員としての給与所得がある人が多いため、事業の赤字は給与所得と相殺されることがあります。給与から源泉徴収された所得税がある場合、相殺によって還付が出ることもあります。

雑所得の赤字は対象にならない

手引きでは、雑所得の赤字は損益の通算ができない損失に挙げられています。会社員の副業として業務委託の報酬を雑所得で申告している場合、その赤字は給与所得と相殺できず、純損失として繰り越すこともできません。事業所得と雑所得のどちらで申告するかは、規模や継続性などで判断が分かれるため、迷う場合は税理士・税務署にご相談ください。

青色申告特別控除で赤字は増やせない

青色申告特別控除は、事業所得などの黒字の範囲が限度です。国税庁のタックスアンサーでは、控除の限度になる合計額は「損益通算前の黒字の所得金額の合計額」とされています。事業所得が赤字の年に、65万円の控除を足して赤字を大きくすることはできません。

青色申告と白色申告で繰り越せる範囲が違う

繰越しの対象は、赤字が出た年に青色申告をしていたかどうかで大きく変わります。

赤字が出た年の申告繰り越せる純損失
青色申告純損失の全額(居住用財産の譲渡損失に関する部分など一部を除く)。ただし、前年に繰り戻して還付を請求した分は除く
白色申告変動所得の損失と、災害で事業用の資産が受けた損失などに限られる

変動所得とは、漁業・養殖による所得や、原稿料・印税・作曲料などの所得を指します。システム開発やコンサルティングの報酬は、一般的には変動所得にあたりません。白色申告のエンジニアやコンサルが、通常の事業の赤字を繰り越すのは難しいと考えてください。

赤字の年から青色申告を使うには、その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した人は開業日から2か月以内)に青色申告承認申請書を出しておく必要があります。手続きは青色申告の記事で解説しています。

繰越しの条件は「損失の年の申告」と「その後の連続申告」

手引きでは、繰越しをするには「損失が生じた年分の確定申告書を提出し、かつ、その後連続して確定申告書を提出することが必要」とされています。この申告を確定損失申告と呼びます。

具体的には次の流れです。

  1. 赤字の年:確定申告書と一緒に「申告書第四表(損失申告用)」を作り、繰り越す純損失の金額を書いて提出する
  2. 翌年以後:黒字になった年も、まだ黒字にならない年も、毎年確定申告書を出す。繰り越してきた損失を、その年の所得から差し引く
  3. 3年間:差し引ききれなかった損失は、赤字の年の翌年から3年目まで持ち越せる。それを過ぎた分は差し引けない

途中の年に申告を出さないと、その後の繰越しが続けられなくなります。所得が少なくて納税額が出ない年も、申告書は出しておきましょう。

特定非常災害の場合は5年

国税庁によると、令和5年4月1日以後に特定非常災害の指定を受けた災害で損失が出た場合、一定の純損失の繰越期間は3年から5年に延びます。対象は、事業用の資産が受けた損失の割合などで決まるため、被災した場合は税務署にご確認ください。

繰り越した損失の差し引き方(仮の数字)

数字は説明のための仮のものです。1年目に事業所得だけで120万円の赤字が出て、青色申告で損失申告をしたとします。

年事業所得繰越控除繰越控除後の所得次の年へ繰り越す額
1年目−120万円―0円120万円
2年目80万円80万円0円40万円
3年目400万円40万円360万円0円

2年目で引ききれなかった40万円を3年目に差し引いています。3年目でも引ききれない場合は4年目まで持ち越せますが、5年目以後には持ち越せません。

基礎控除などの判定は「繰越控除の前」の所得で行う

国税庁の用語の説明では、「合計所得金額」は純損失の繰越控除などを受けている場合でも、その適用前の金額をいいます。一方、「総所得金額等」は繰越控除の適用後の金額です。

上の例の3年目なら、合計所得金額は400万円、総所得金額等は360万円です。基礎控除の区分や配偶者控除を受けられるかどうかは合計所得金額で判定するため、繰越控除で所得が下がっても、控除の判定に使う所得は下がりません。言葉の違いは売上・所得・手取りの違いの記事で整理しています。所得税の計算全体は所得税の計算の記事をご覧ください。

繰越しの代わりに前年の税金を戻す「繰戻し還付」

国税庁によると、前年も青色申告をしている場合は、繰越しに代えて、純損失を前年の所得に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受けることもできます。

比べる点繰越し繰戻し還付
前年の申告問わない(赤字の年に青色申告であること)前年も青色申告をしていること
効果翌年以後3年間の所得税が減る前年に納めた所得税が戻る
手続き損失申告用の第四表を付けて確定申告「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を確定申告期限内に出す

国税庁の手続き案内では、還付請求書の提出時期は「確定申告期限内」です。e-Taxのほか、書面で持参・送付することもできます。繰り戻して還付を請求した分は、翌年以後に繰り越せません。一部を繰り戻し、残りを繰り越す形もあります。

独立した年は前年が会社員で白色申告もしていないことが多いため、繰戻しを使えるのは、青色申告を2年以上続けた後に赤字が出た場合が中心です。前年の税率が高かった年は繰戻し、今後の所得の伸びが見込める年は繰越しといった比べ方がありますが、住民税の扱いも含めて損得が変わるため、個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。

赤字の年に気をつけたいこと

よくある質問

赤字の年に確定申告をしなかった場合、翌年から繰越しはできますか?

繰越しは、損失が生じた年分の確定申告書を出していることが前提です。赤字の年の申告を出していないと、翌年の申告で過去の赤字を差し引くことはできません。気づいた時点で、赤字の年の申告をどう扱えるか税務署にご相談ください。

3年間で引ききれなかった赤字はどうなりますか?

赤字の年の翌年から3年目までに差し引けなかった分は、それ以後の年には繰り越せません。特定非常災害で損失が出た場合など、一定の要件に当てはまるときは5年間に延びます。

繰り越した赤字があると、翌年の所得が少なく見えて基礎控除が増えますか?

増えません。基礎控除の区分は合計所得金額で判定し、合計所得金額は純損失の繰越控除を適用する前の金額です。繰越控除で下がるのは課税の対象になる所得で、控除の判定に使う所得ではありません。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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