国民健康保険料の軽減と減免|フリーランスが使える制度と申請が必要なもの
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
国民健康保険料を下げる仕組みは、大きく「軽減」と「減免」の2つです。軽減は、世帯の所得が国の基準を下回る場合などに、法令にもとづいて保険料の一部が減らされる仕組みです。減免は、災害や所得の大幅な減少など特別な事情で納めるのが難しいときに、申請して認められると保険料が減る仕組みです。
フリーランスが押さえたいのは、低所得世帯の7割・5割・2割軽減は申請が要らない一方で所得の申告が前提になること、会社都合などで退職した人の軽減は申請が必要なこと、所得が急に減ったときの減免は市区町村ごとに条件や申請の期限が違うことです(2026年10月時点)。
「軽減」と「減免」の違い
厚生労働省の案内をもとに整理すると、次のようになります。
| 区分 | 主な制度 | 手続き | 内容の決まり方 |
|---|---|---|---|
| 軽減 | 低所得世帯の7割・5割・2割軽減 | 申請不要(所得の申告が必要) | 国の基準 |
| 軽減 | 未就学児・18歳未満の子どもの均等割の軽減 | 申請不要 | 国の基準 |
| 軽減 | 倒産・解雇などで離職した人(非自発的失業者)の軽減 | 申請が必要 | 国の基準 |
| 軽減 | 出産する人の産前産後期間の軽減 | 届出が必要 | 国の基準 |
| 減免 | 災害、所得の大幅な減少、そのほか特別な事情 | 申請が必要 | 市区町村の条例など |
保険料の計算方法そのもの(所得割・均等割・平等割)は国民健康保険の記事で解説しています。ここでは、負担を下げる制度の使い方に絞ります。
低所得世帯の7割・5割・2割軽減
判定の基準(令和8年度)
世帯の前年の所得の合計が基準額以下のとき、均等割と平等割(応益割)が7割・5割・2割のいずれか減額されます。福岡市・堺市・東京都中央区が公表している令和8年度の基準額は、次の式で共通しています。
| 軽減割合 | 前年の所得の合計がこの額以下 |
|---|---|
| 7割 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数−1) |
| 5割 | 43万円+31万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1) |
| 2割 | 43万円+57万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1) |
「10万円×(給与所得者等の数−1)」は、世帯に給与所得者や公的年金の受給者が2人以上いる場合だけ計算します。給与所得者等にあたる収入の範囲は、市区町村の案内で確かめてください。
判定に使う「所得」の注意点
- 世帯主の所得も入る:国民健康保険に入っていない世帯主(住民票上の世帯主)の所得も合算する
- 所得控除の前の金額:収入から必要経費を引いた額で、社会保険料控除などの所得控除は引かない
- 事業専従者給与は差し引かない:堺市・福岡市の案内では、専従者控除は行わず、専従者給与もないものとして扱う
たとえば、給与所得者等がいない単身のフリーランスで、前年の所得が70万円の場合、5割軽減の基準額は43万円+31万円×1人=74万円なので、5割軽減の対象になる計算です。
独立した年の判定は会社員時代の所得で行う
軽減の判定は前年の所得で行います。会社員を辞めて独立した年度は、会社員時代の給与所得で判定されるため、独立後の売上が少なくても会社員時代の給与所得が基準額を超えていれば、7割・5割・2割軽減の対象になりません。翌年度からは、フリーランスとしての所得(売上から経費を引いた額)で判定されます。独立直後の保険料の負担を下げたい場合は、後で説明する非自発的失業者の軽減や減免の対象になるかを確かめます。
申請は不要、でも所得の申告は必要
この軽減は、市区町村が世帯全員の所得をもとに判定します。そのため、世帯の中に所得が分からない人が1人でもいると、軽減が適用されません(福岡市・堺市の案内)。
所得がなかった人や、確定申告をしていない家族がいる場合は、市区町村の簡易な所得申告書などで申告します。独立直後で売上が少なかった年も、確定申告を期限内に済ませておくことが、軽減を受ける前提になります。
会社都合などで退職した人の軽減(非自発的失業者)
対象と内容
倒産・解雇などで離職した人(雇用保険の特定受給資格者)や、雇い止めなどで離職した人(特定理由離職者)は、申請すると保険料が軽減されます。厚生労働省の案内による内容は次のとおりです。
- 前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する
- 期間は、失業したときから翌年度末まで
- 高額療養費などの所得区分の判定にも、同じみなしを使う
堺市と東京都中央区の案内では、対象者の条件として次の点を挙げています。
- 離職時点で65歳未満(堺市は「64歳以下」と表記)
- 雇用保険の受給資格者証などの離職理由コードが「11・12・21・22・23・31・32・33・34」のいずれか
- 申請が必要
フリーランスになる人が気をつけたい点
まず、自己都合で退職した場合は、原則として対象になりません。特定理由離職者には、病気などの正当な理由がある自己都合の離職も含まれるため、離職理由コードで確かめます。
また、堺市は対象を「雇用保険の失業等給付を受ける方」としています。退職後すぐに開業し、雇用保険の手続きをしない場合は、市区町村によって対象にならないことがあります。退職と開業の順番と雇用保険の関係は失業保険と開業の記事で扱っています。
軽減されるのは給与所得の部分です。前年に副業の事業所得があった場合、その部分は100分の30にはなりません。また中央区は、軽減後も保険料が変わらない場合があるとしています。
所得が大きく減ったときの減免
内容は市区町村ごとに違う
厚生労働省は、災害その他特別の事情で保険料を納めることが難しい場合、減免や納付猶予を受けられる場合があるとしています。ただし、どんな事情を対象にするか、どれだけ減らすかは市区町村ごとに決まっています。
2つの区市の案内を比べると、違いが分かります。
| 堺市 | 東京都中央区 | |
|---|---|---|
| 所得の減少への減免 | 事業の休廃止や失業などで所得が大幅に減った場合、所得割を減額 | 災害や事故などで生活が一時的に著しく困難になった場合、申請により減免される場合がある |
| 減額の目安 | 所得の減少率30%以上から、減少率に応じて所得割の30%〜100% | 案内では個別の問い合わせとしている |
| 申請の期限 | 納期限までに申請 | 問い合わせ |
堺市の場合、世帯全体の所得や所得の種類などにも条件があります。お住まいの市区町村で「国民健康保険料 減免」と調べ、条件と期限を確かめてください。
申請が遅れると対象外になることがある
堺市のように、納期限までの申請を求める市区町村があります。保険料を滞納してから相談するより、所得が減ると分かった段階で窓口に相談するほうが、使える制度の幅が広がります。
減免の対象にならなくても、災害や事業の休廃止などで納めるのが難しい場合は、徴収の猶予を設けている市区町村もあります(堺市)。
申請の前にそろえておくもの
必要な書類は市区町村や制度によって違いますが、次のものを用意しておくと相談が進めやすくなります。
- 前年の所得が分かる書類:確定申告書の控え、源泉徴収票
- 今年の所得の見込みが分かる資料:帳簿、売上の記録、契約書など(所得減少の減免)
- 雇用保険の受給資格者証など:非自発的失業者の軽減
- 母子健康手帳など:産前産後期間の軽減(詳しくは出産・育児で使える制度の記事)
- 本人確認書類とマイナンバーが分かるもの
病気やけがで働けないときに使える制度全体は病気やけがのときの制度の記事、国民年金保険料の免除は国民年金の記事で扱っています。国民年金の免除は国民健康保険とは別に申請が必要です。
よくある質問
軽減は自動で適用されますか?
低所得世帯の7割・5割・2割軽減と、子どもの均等割の軽減は申請不要です。ただし、世帯の中に所得が分からない人がいると適用されません。非自発的失業者の軽減、産前産後期間の軽減、減免は、申請や届出が必要です。
自己都合で会社を辞めて独立しました。非自発的失業者の軽減は使えますか?
原則として対象になりません。対象は、倒産・解雇などの特定受給資格者と、雇い止めや正当な理由のある自己都合などの特定理由離職者です。離職理由コードと、雇用保険の手続きの有無で判断されるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
独立して売上が下がりました。前年の所得で決まった保険料を減らしてもらえますか?
市区町村によっては、事業の休廃止や失業などで所得が大幅に減った場合の減免を設けています。対象になる減少率、所得の種類、申請の期限は市区町村ごとに違うため、納期限の前に窓口へご相談ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。