フリーランスの出産・育児で使える制度|出産育児一時金と国保・国民年金の免除
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
フリーランス(国民健康保険・国民年金の第1号被保険者)が出産・育児で使える主な公的制度は、出産育児一時金(子ども1人につき原則50万円)、国民健康保険料の産前産後期間の軽減、国民年金保険料の産前産後期間の免除の3つです。さらに2026年10月から、子が1歳になるまで国民年金保険料が免除される「育児免除」が始まりました。父母ともに対象で、所得の要件はありません。
一方で、会社員の健康保険にある出産手当金のように、休んでいる間の収入を補う給付は、国民健康保険法で市町村が行うものと定められた給付ではありません。使える制度で出ていくお金を減らし、収入の空白は契約期間や貯蓄で備えるのが基本の考え方です(2026年10月時点)。
使える制度の全体像
| 制度 | 内容 | 手続きの窓口 | 申請・届出 |
|---|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 子ども1人につき原則50万円 | 加入している健康保険(国保は市区町村) | 必要(直接支払制度なら病院が代行) |
| 国保の産前産後軽減 | 出産する人の所得割・均等割を4か月分(多胎は6か月分)軽減 | 市区町村 | 届出が必要 |
| 国民年金の産前産後免除 | 4か月分(多胎は6か月分)の保険料を免除し、納付したものとして扱う | 市区町村の国民年金窓口 | 届出が必要 |
| 国民年金の育児免除 | 子が1歳になるまで、父母それぞれの保険料を免除し、納付したものとして扱う | 市区町村の国民年金窓口 | 原則届出が必要 |
働き方の組み立てや保育園探し、案件選びは子育てとフリーランスの記事で扱います。この記事では、公的な制度と手続きに絞って整理します。
出産育児一時金
金額と対象
厚生労働省によると、出産育児一時金は、公的医療保険の加入者が出産したときに、子ども1人につき原則50万円が支給される制度です。2023年4月に、それまでの原則42万円から引き上げられました。
支給の要件は次の2つです。
- 出産した時点で日本の公的医療保険に加入していること
- 妊娠4か月(85日)以上での出産であること
国民健康保険法では、出産育児一時金は市町村などが条例または規約で定めて行う給付とされています。国保に加入しているフリーランスは、お住まいの市区町村に申請します。
受け取り方は3通り
| 方法 | 仕組み | 窓口での支払い |
|---|---|---|
| 直接支払制度 | 病院などが本人に代わって申請し、保険者から病院へ直接支払う | 出産費用から一時金を引いた額 |
| 受取代理制度 | 本人が申請し、病院などが代わりに受け取る | 出産費用から一時金を引いた額 |
| 償還払い | 本人が申請して、本人が受け取る | いったん全額を払う |
出産費用が一時金より少なかった場合は、差額を保険者から受け取れます。どの方法を使えるかは出産する施設によって違います。申請の期限は、出産日の翌日から2年以内です。
独立した直後に出産する場合
会社を辞めてから6か月以内に出産した人は、出産したときに加入している保険者ではなく、以前加入していた保険者から出産育児一時金を受け取ることを選べます。ただし、以前の保険者に1年以上続けて加入していたことが必要です。会社の健康保険の任意継続を選んだ場合の扱いは任意継続と国民健康保険の記事で比べています。
国民健康保険料の産前産後期間の軽減
国民健康保険に加入している人が出産する場合、出産する人の保険料の一部が軽減されます。堺市の案内による内容は次のとおりです。
- 軽減される保険料:出産する(した)被保険者の所得割と均等割(全額)
- 単胎の期間:出産予定月(出産月)の前月から、出産予定月の2か月後の月までの4か月分
- 多胎の期間:出産予定月(出産月)の3か月前から、出産予定月の2か月後の月までの6か月分
- 対象になる出産:妊娠85日以上の出産。死産・流産も含む
- 届出:出産予定日の6か月前からできる。母子健康手帳など、妊娠・出産の事実が分かる書類が必要
東京都中央区はこの軽減を2024年1月からの制度として案内しています。軽減されるのは出産する人本人の分で、世帯のほかの人の保険料は対象外です。届出の方法や必要書類は市区町村ごとに違うため、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。国保のほかの軽減・減免は国民健康保険料の軽減と減免の記事にまとめています。
国民年金の産前産後期間の免除
日本年金機構によると、国民年金の第1号被保険者が出産するとき、次の期間の保険料が免除されます。
- 単胎:出産予定日(出産日)が属する月の前月から4か月間
- 多胎:出産予定日(出産日)が属する月の3か月前から6か月間
この免除のいちばんの特徴は、免除された期間も保険料を納付したものとして老齢基礎年金の額に反映されることです。通常の免除のように年金額が減ることはありません。
手続きのポイントは次のとおりです。
- 出産予定日の6か月前から届け出られる(出産後でもよい)
- 住民登録をしている市区町村の国民年金担当窓口に出す(郵送・電子申請も可)
- 出産前なら母子健康手帳など、出産予定日と単胎・多胎が分かる書類を添える
- 産前産後期間も付加保険料(月400円)は納められる
国民年金の任意加入の期間は対象外です。また、前納の口座振替などをしている場合は、免除期間の前後で振替の方法が変わることがあります。国民年金基金に加入している人は、産前産後期間の免除を受けても加入を続けられる例外があります(国民年金基金の記事)。
2026年10月から始まった国民年金の育児免除
対象は1歳未満の子を育てる父母
国民年金保険料の育児免除は、1歳になるまでの子を養育する第1号被保険者の実父母・養父母が対象です。日本年金機構の案内による主な条件は次のとおりです。
- 子と親子関係があること
- 子と同じ住所であること
- 所得の要件はない
- 第3号被保険者(会社員の配偶者の扶養)と任意加入の人は対象外
父母がどちらもフリーランスなら、夫婦ともに対象になります。免除された期間は、産前産後免除と同じく、保険料を納付したものとして老齢基礎年金の額に反映されます。
免除される期間
| 対象者 | 免除される期間 |
|---|---|
| 産前産後免除を受けた実母 | 産前産後免除の期間に続く9か月間 |
| 実父・養父母(産前産後免除を受けていない実母を含む) | 子を養育することになった月から、1歳の誕生日の前月までの最大12か月間 |
日本年金機構の例では、出産日が令和9年5月1日の場合、実母は令和9年8月から令和10年4月までの9か月間、実父は令和9年5月から令和10年4月までの12か月間が免除の対象です。
制度が始まる前に生まれた子でも、2026年10月1日時点で1歳未満であれば、10月以降の月分が対象になります。
届出の要否
原則として届出が必要で、要件を満たしたら速やかに届け出ます。産前産後免除とあわせて届け出ることもできます。
ただし、産前産後免除を受けた実母で、マイナンバーを使った情報連携で子との親子関係と同じ世帯であることを確認できる人は、届出が要りません。該当する人には「国民年金保険料育児免除該当通知書」が届きます。実父・養父母は届出が必要です。
すでに保険料を納めた月も、届け出れば育児免除の期間として扱われ、納めた保険料は充当または還付されます。育児免除の期間中も付加保険料は納められます。保険料の基本は国民年金の記事、付加保険料は付加年金の記事をご覧ください。
会社員との違い:休んでいる間の収入
会社員の健康保険には、出産で仕事を休んだ期間の収入を補う出産手当金があります。国民健康保険法では、出産育児一時金は市町村などが行う給付とされる一方、傷病手当金などそのほかの給付は「条例又は規約の定めるところにより」「行うことができる」とされています。休業中の収入を補う給付があるかどうかは、加入している市区町村や国民健康保険組合で確かめる必要があります。
そのため、フリーランスの出産では、次の順で準備しておくと見通しが立てやすくなります。
- 出ていくお金を減らす:国保の軽減、国民年金の産前産後免除・育児免除の届出を済ませる
- 入ってくるお金の予定を確かめる:参画中の案件の報酬の支払期日と、契約の終わりの日を確かめる
- 休む期間の生活費を見積もる:出産育児一時金で足りない出産費用と、稼働しない期間の生活費を分けて考える
- 発注者と働き方を話し合う:従業員を使う発注者は、6か月以上の業務委託の相手から申出があれば、育児などとの両立に配慮する義務がある
4つ目のフリーランス新法の配慮義務は、育児・介護とフリーランス新法の記事で解説しています。
手続きのタイミング
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 出産予定日の6か月前から | 国保の産前産後軽減、国民年金の産前産後免除の届出(育児免除もあわせて届け出られる) |
| 出産前 | 出産する施設で、直接支払制度を使うかを確かめる |
| 出産後 | 出産育児一時金の差額の申請(必要な場合)、実父・養父母は育児免除の届出 |
| 子が1歳になったとき | 育児免除は期間満了で終わる(手続き不要) |
よくある質問
夫が会社員で、私はフリーランスです。育児免除は使えますか?
国民年金の第1号被保険者であれば、育児免除の対象です。会社員の配偶者の扶養に入っている第3号被保険者は対象外ですが、もともと自分で保険料を納める必要がありません。会社員の夫は、厚生年金の育児休業等期間の保険料免除の対象になるかを勤務先で確かめてください。
産前産後免除を受けると、将来の年金は減りますか?
減りません。産前産後免除と育児免除の期間は、保険料を納付したものとして老齢基礎年金の額に反映されます。所得による通常の免除とは扱いが違います。
出産前に届出を忘れていました。出産後でも間に合いますか?
国民年金の産前産後免除は、出産後でも届け出られます。育児免除も、要件を満たしたあと速やかに届け出ます。国保の産前産後軽減の届出の時期は市区町村によって案内が違うため、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
参考にした公的情報・資料
- 出産育児一時金等について(厚生労働省)
- 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度(日本年金機構)
- 国民年金保険料の育児免除制度(日本年金機構)
- 保険料の軽減と減免(堺市)
- 国民健康保険料の軽減・減免(東京都中央区)
- 国民健康保険法(e-Gov法令検索)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。