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フリーランス新法・下請法業務中にけがをしたとき|労災の特別加入者の請求の流れと準備すること
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
労災保険に特別加入しているフリーランスが、業務中や通勤中にけがをしたときは、まず治療を受け、受診のときに仕事中(通勤中)のけがであることを伝えます。給付の請求書は、特別加入団体の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。労災指定の医療機関で治療を受ける場合の請求書は、医療機関を経由して出す形です。
特別加入していない場合は、労災保険の給付は受けられません。ただし、契約の形にかかわらず実態として労働者と認められる場合は、特別加入していなくても労災保険が適用されます。加入の区分や保険料は特別加入の記事にまとめているので、この記事では、けがをしたあとの動き方を2026年10月時点の厚生労働省の資料をもとに整理します。
けがをした直後にすること
- 治療を優先する:けがの程度に応じて受診します。救急の場合は、先に手当てを受けてかまいません
- 受診先に「仕事中(通勤中)のけが」と伝える:労災の請求をするつもりであることを伝え、健康保険(国民健康保険)の扱いにしないよう相談します
- 特別加入団体に連絡する:被災したことを伝え、請求の手順や必要な書類を確かめます
- 状況を記録する:日時、場所、何をしていたか、どのようにけがをしたか、目撃した人。写真が撮れるなら現場も残します
- 取引先・契約の相手に連絡する:稼働への影響と、当面の作業の扱いを相談します
状況の記録は、業務によるけがかどうかの判断に使われます。特に、何の作業をしていたか、その作業が契約に基づく業務とどうつながっているかを、具体的に書いておきます。
特別加入者が請求するときの流れ
厚生労働省のリーフレットでは、特別加入者が仕事中や通勤中にけがをしたときは、請求したい保険給付の請求書を、特別加入団体の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署に提出するとされています。自宅や取引先の近くの監督署ではない点に注意が必要です。
| 給付 | 主な場面 | 様式(業務災害/通勤災害) | 出し方 |
|---|---|---|---|
| 療養の給付 | 労災指定の医療機関で治療を受ける | 様式第5号/第16号の3 | 医療機関を経由して監督署へ |
| 療養の費用の支給 | 指定以外の医療機関で治療を受け、費用を払った | 様式第7号/第16号の5 | 監督署へ |
| 休業の給付 | けがの療養のために働けない日が4日以上 | 様式第8号/第16号の6 | 監督署へ |
様式は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」から入手できます。請求書の書き方や証明の欄の扱いは、特別加入者ならではの点もあるため、加入している特別加入団体に確かめながら作りましょう。
交通事故など、第三者の行為でけがをした場合は、「第三者行為災害届」の提出も必要になります。この様式も同じページに掲載されています。
補償の対象になる範囲
業務災害
特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)では、ITフリーランスが補償を受けられる場合を、次のように示しています。
- 契約に基づき報酬が支払われる、情報処理システムやソフトウェア、Webページの設計・開発(プロジェクト管理を含む)・管理・監査・セキュリティ管理などの作業と、それに直接附帯する行為を行う場合
- その作業に必要な移動を行う場合(通勤災害の場合を除く)
客先での作業中、作業に必要な機器を運ぶ途中、打ち合わせのための移動中などのけがが、まず検討の対象になります。一方、契約の業務と関係のない私用の時間のけがは対象になりません。在宅での作業中のけがも、業務との関係から個別に判断されます。
通勤災害
通勤とは、就業に関して、住居と就業の場所の往復などを、合理的な経路と方法で行うことをいいます(労働者災害補償保険法第7条)。通勤の途中で経路を外れたり中断したりすると、その間とその後の移動は原則として通勤になりません。ただし、日用品の購入など日常生活上必要な行為を最小限の範囲で行った場合は、元の経路に戻った後は通勤として扱われます。
休業の給付は「全部労働不能」が条件
休業の給付は、休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%が支給され、あわせて休業特別支給金として20%が支給されます。
ここで特別加入者に特有の条件があります。しおりでは、特別加入者の休業の給付は、所得を失ったかどうかにかかわらず、補償の対象とされている範囲の業務や作業について全部労働不能であることが必要とされています。全部労働不能とは、入院中、または自宅で寝て療養している・通院して療養しているなどで、補償の対象の業務や作業ができない状態をいいます。
けがの程度によっては、通院しながら短い時間だけ在宅で作業できることもあります。そうした場合の扱いは個別に判断されるため、休業の給付を請求する前に監督署や特別加入団体に確認しておきましょう。
しおりには、給付基礎日額1万円で20日間休業した場合の例が示されています。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 休業の給付 | 1万円 × 60% × (20日 − 3日) | 10万2千円 |
| 休業特別支給金 | 1万円 × 20% × (20日 − 3日) | 3万4千円 |
最初の3日間は支給されないため、短い休業では給付が出ないこともあります。
健康保険を使ってしまったとき
厚生労働省のリーフレットは、労働災害なのに健康保険を使って治療を受けた場合について、病院で労災保険への切り替えができるときは、様式第5号(通勤は第16号の3)の請求書を受診した病院に出すと説明しています。切り替えができないときは、健康保険の保険者に申し出て医療費を返還し、そのうえで様式第7号(通勤は第16号の5)で労災保険に請求する流れです。一時的に医療費の全額を負担することになる場合があります。
このリーフレットは主に会社員を想定したものです。国民健康保険に加入しているフリーランスの場合の具体的な手続きは、市区町村の国民健康保険の窓口と労働基準監督署にご確認ください。受診のときに最初から労災であることを伝えておけば、こうした手間を減らせます。
支給されない・減らされることがある場合
- 特別加入する前のけがや病気:加入前に起きた災害や、加入前の原因で発症した病気は対象になりません
- 故意・重大な過失:しおりでは、災害が特別加入者の故意または重大な過失で起きた場合、支給の制限(全部または一部)が行われることがあるとされています
- 保険料の滞納中:保険料を滞納している期間中に起きた災害も、支給の制限の対象になり得ます
- 請求の時効:療養・休業・葬祭料などの給付を受ける権利は2年、障害・遺族の給付は5年で時効により消滅します(労働者災害補償保険法第42条)
治療が長引いてから請求しようとすると、記録をそろえるのが難しくなります。請求書は、治療の区切りを待たずに、早めに準備を始めましょう。
特別加入していなかったとき
特別加入していないフリーランスは、業務中のけがでも労災保険の給付を受けられません。治療は国民健康保険などで受け、休業中の収入は、民間の所得補償保険などの備えがあればそこから補います(所得補償保険の記事)。
ただし、厚生労働省のリーフレットは、契約の形式にかかわらず実態として労働者と認められる場合は、特別加入していなくても労災保険が適用されると説明しています。取引先の指揮命令を受けて社員と同じように働いていた場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。判断の基準は労働者性の記事で解説しています。
よくある質問
在宅で作業しているときのけがも、労災の対象になりますか?
対象になるかどうかは、けがをしたときに何をしていたかで個別に判断されます。契約に基づく作業や、それに直接附帯する行為の最中であれば検討の対象になりますが、家事や私用の最中のけがは対象になりません。何の作業をしていたかを具体的に記録し、労働基準監督署や特別加入団体に確認しましょう。
特別加入の手続き中にけがをしました。補償されますか?
特別加入は、労働局長の承認を受けてから補償の対象になります。加入前に起きた災害は対象にならないため、承認の時期がいつかを特別加入団体に確かめてください。客先への出社が多いなど、けがの心配がある働き方なら、加入を考えた時点で早めに手続きを進めておくと安心です。
取引先の設備でけがをした場合も、自分の特別加入で請求するのですか?
特別加入者が業務中にけがをした場合は、特別加入の労災保険に請求するのが基本です。そのうえで、取引先の設備の不具合など、ほかの人の責任が関わる可能性があるときは、損害賠償の問題が別に生じることがあります。労災保険の給付との関係も含め、労働基準監督署や弁護士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
- 令和6年11月から労災保険に特別加入できるようになりました フリーランスの皆さまへ(厚生労働省)
- 特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)(厚生労働省)
- 労災保険給付関係 主要様式ダウンロードコーナー(厚生労働省)
- お仕事でのケガ等には、労災保険!(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 労働者災害補償保険法(e-Gov法令検索)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。