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業務委託契約の基礎

債権譲渡の禁止条項とファクタリングの注意点|契約書の読み方と使う前の確認

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

業務委託契約書に「本契約に基づく債権を第三者に譲渡してはならない」という条項(譲渡制限特約)があっても、2020年4月1日に施行された改正民法のもとでは、報酬の債権を譲渡すること自体は原則として有効です。ただし、特約を知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人に対しては、取引先は支払を拒み、元の債権者であるフリーランスに支払うことができます。特約は今も意味を持っています。

ファクタリングは、この報酬の債権(売掛金)を期日前に売って現金にする取引です。金融庁は、ファクタリングを装った貸付け(偽装ファクタリング)や、高額な手数料による資金繰りの悪化に注意を呼びかけています。使う前に、契約書の条項と業者の仕組みの両方を確かめることが大切です(2026年10月時点の情報です)。

譲渡制限特約の効力:改正後の民法のルール

報酬を受け取る権利は「債権」で、民法第466条第1項は、債権は原則として譲り渡すことができるとしています。契約書でよく見る「譲渡禁止」「譲渡制限」の条項は、この譲渡を当事者の間で禁止・制限する取り決めです。

改正後の民法は、この特約について次のように定めています。

条文内容
第466条第2項譲渡制限の意思表示をしても、債権の譲渡の効力は妨げられない
第466条第3項特約を知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人などに対しては、債務者は履行を拒み、譲渡人への弁済などで対抗できる
第466条第4項債務者が履行しない場合に、譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がなければ、第3項は適用されない
第466条の2譲渡制限特約のある金銭債権が譲渡されたとき、債務者は全額を供託できる

改正は2020年4月1日に施行されています(法務省の案内)。古い解説には改正前のルールを前提にした説明が残っていることがあるため、今の条文で確かめるようにしてください。

フリーランスにとっての意味

ファクタリング業者は、契約書を見れば特約があることを知り得ます。そのため、取引先は「特約を知っていた譲受人」である業者への支払を拒み、これまでどおりフリーランスに支払うことができる場面があります。特約があることで、ファクタリングの仕組みが成り立ちにくくなったり、条件が変わったりすることがあります。

また、特約に反して譲渡したことが、取引先との契約上どう評価されるか(契約違反として扱われるか、解除の理由になるか)は、契約の定め方や事情によって考え方が分かれ得ます。取引先との関係に影響することもあるため、特約のある債権を譲渡する前に、弁護士などの専門家に相談してください。

条項の書き方で読み取ること

譲渡に関する条項は、書き方によって対象が少しずつ違います。

条項の例読み取ること
本契約から生じる債権を第三者に譲渡してはならない報酬の債権の譲渡を制限している
相手方の書面による承諾なく、本契約上の地位または権利義務を第三者に譲渡し、または担保に供してはならない契約の当事者の立場そのものの移転と、債権の譲渡・担保の差し入れをまとめて制限している。承諾があれば認められる書き方
譲渡制限の条項がない民法の原則どおり、債権は譲渡できる

「承諾を得れば可」という書き方なら、取引先の承諾を得て進める道があります。どの書き方でも、条項の対象と例外を読んでから判断します。署名前の確認の全体は契約書のチェックポイントの記事をご覧ください。

ファクタリングの仕組み

金融庁の注意喚起では、ファクタリングを、事業者が持つ売掛債権などを、期日前に一定の手数料を差し引いて買い取るサービスと説明し、法的には債権の売買(債権譲渡)契約であるとしています。

フリーランスの場合、売る債権は「取引先に対する報酬の債権」です。エージェント経由の案件なら、その債権の相手(債務者)はエージェントになります。契約の相手が誰かは三者の関係の記事で整理しています。

取引先に知らせる形と、知らせない形

債権の譲渡を債務者や第三者に主張するには、譲渡人から債務者への通知か、債務者の承諾が必要です(民法第467条)。ファクタリングには、取引先に通知や承諾を求めて行う形と、取引先に知らせずに行う形があります。

形特徴気をつけること
取引先に知らせる形取引先が業者に直接支払う取引先に資金繰りの事情が伝わる。特約があれば承諾を得られないこともある
取引先に知らせない形取引先はこれまでどおりフリーランスに支払い、フリーランスが受け取った報酬を業者に渡す回収の役割をフリーランスが負う。仕組みによっては貸付けと同じ働きになる(下記)

金融庁が注意を呼びかけている点

偽装ファクタリング

金融庁は、貸金業の登録を受けていない業者が、ファクタリングを装って貸付けをしている事案が確認されているとしています。契約書の上で債権の売買とされていても、経済的に貸付けと同じ働きをするものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

その例として挙げられているのが、売主が債権の回収を任され、回収できなかったときに売主が債権を買い戻したり、自分の資金で業者に支払ったりする仕組みです。さらに、判断は「回収できなくても返済義務はない」という規定の有無だけでなく、経済的な実態も含めて行われるとしています。

また、買取代金が債権の額に比べて著しく低い場合は、偽装ファクタリングの疑いがあるとしています。貸金業を営むには財務局か都道府県の登録が必要で、無登録の営業は刑事罰の対象です。金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で、登録の有無を調べられます。

高額な手数料と悪質な取立て

金融庁は、高額な手数料を払うと資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があるとしています。また、業務の平穏を害するような取立てのおそれにもふれ、被害に遭った場合は警察に相談するよう呼びかけています。

ファクタリングを考える前に確かめたいこと

1. 支払期日そのものを見直せないか

フリーランス新法では、従業員を使う発注者は、受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間で支払期日を定めることとされています。支払期日の決まり方は60日ルールの記事、締め日と支払日の読み方は支払サイトの記事をご覧ください。支払サイトの長さが資金繰りの原因なら、次の契約から支払条件を相談する余地があります。

なお、取適法(旧下請法)の対象となる取引では、発注者が支払の手段としてファクタリングなどを使う場合のルールも設けられています(取適法の記事)。これは、発注者側の支払方法の話で、フリーランスが自分で債権を売る場合とは別の話です。

2. 入金の遅れが原因ではないか

支払期日を過ぎても入金がないことが資金繰りの原因なら、まずは督促や相談の手順を進めます(報酬が支払われないときの記事)。未払いの債権をファクタリングで売ろうとしても、条件が厳しくなりがちです。

3. 手元資金の備えを作れないか

独立した直後や、案件の切り替えの時期は、入金までの間が空きやすくなります。収入が途切れたときの備えの決め方は備えの貯蓄の記事にまとめています。

よくある質問

契約書に譲渡禁止の条項があると、ファクタリングは使えませんか?

譲渡自体は原則として有効ですが、取引先が業者への支払を拒める場合があるため、業者が取引を断ったり、条件が変わったりすることがあります。また、特約に反したことが取引先との関係でどう扱われるかは事情によります。使う前に、契約書の条項を確かめ、専門家に相談してください。

取引先に知られずにファクタリングを使うことはできますか?

取引先に知らせない形の取引はありますが、フリーランスが報酬を受け取って業者に渡す役割を負います。回収できなかったときにフリーランスが負担する仕組みだと、金融庁が注意を呼びかける偽装ファクタリングにあたるおそれがあります。契約書の仕組みを必ずご確認ください。

手数料が高いかどうかは、どう判断すればよいですか?

この記事では手数料の目安となる額は示しませんが、金融庁は、買取代金が債権の額に比べて著しく低い場合は偽装ファクタリングの疑いがあるとしています。受け取る金額と、入金までの日数、回収できないときの負担をあわせて比べます。判断に迷うときは、金融庁の金融サービス利用者相談室などに相談できます。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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