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フリーランス新法・下請法取適法(旧下請法)とは|2026年1月の改正ポイントとフリーランスへの影響
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法を改正して2026年1月1日に施行された法律です。主な改正点は、価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払の禁止、従業員数による対象基準の追加などです。改正後のルールは、2026年1月1日以降に行う委託に適用されます。
フリーランスとの取引では、発注者の規模によって取適法も対象になります。両方に違反する行為には原則としてフリーランス新法が優先して使われますが、価格協議のルールのように、フリーランス新法にない定めもあります。2026年10月時点の公正取引委員会・中小企業庁の資料をもとに整理します。
改正のポイントを一覧で見る
公正取引委員会は、改正点として次の5つを挙げています。
| 改正点 | 内容 | フリーランスとの関わり |
|---|---|---|
| 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 | 受注側が価格協議を求めたのに応じない、必要な説明をしないまま代金を決めることを禁止 | 単価の見直しを求める場面で関わる |
| 手形払等の禁止 | 手形での支払を禁止。電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに満額を得ることが難しいものは禁止。振込手数料を受注側に負担させることも禁止 | 報酬の受け取り方に関わる |
| 従業員基準の追加 | 資本金の基準にあたらなくても、従業員数の基準(300人・100人)にあたれば対象 | 資本金の小さい発注者との取引も対象になり得る |
| 特定運送委託の追加 | 製造・販売などの目的物の引渡しに必要な運送の委託を対象に追加 | ITの業務委託では関わることは少ない |
| 面的執行の強化 | 事業所管省庁の大臣に指導・助言の権限。報復措置の申告先にも追加 | 相談先が広がる |
あわせて、法律の題名と用語も変わりました。親事業者は「委託事業者」、下請事業者は「中小受託事業者」、下請代金は「製造委託等代金」です。資本金・従業員数の基準の一覧と、フリーランス新法との対象の違いは下請法とフリーランス新法の違いで詳しく解説しています。
価格協議のルール:一方的な代金決定の禁止
今回の改正でいちばん新しいのが、第5条第2項第4号の「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」です。役務提供委託にもかかります。
協議を求められる「事情」
公正取引委員会のテキストでは、代金の額に影響し得る事情として、次のようなものを挙げています。
- 労務費、原材料価格、エネルギーコストなどの上昇
- 納期の短縮、納入頻度の増加、発注数量の減少といった取引条件の変更
- 需給の変化
- 発注側から従来の代金の引き下げを求められた場合
「協議に応じない」「説明しない」の意味
「協議に応じない」には、はっきり断る場合のほか、求めを無視する、協議を繰り返し先延ばしにするといった場合も含まれます。協議の求めは書面でも口頭でもよく、従来の単価を引き上げて計算した見積書を出すことも、協議を求めたことにあたるとされています。
テキストは、次のような方法で代金が決まった場合は、通常「一方的な代金決定」にあたるとしています。「決定」には、引き上げ・引き下げだけでなく据え置きも含まれます。
- 引き上げの協議を求めたのに、拒否・無視・回答の引き延ばしで応じない
- 合理的な範囲を超える詳しい資料を求め、その提出を協議の条件にする
- 合理的な理由を示して引き上げを求めたのに、具体的な理由や根拠を示さずに一部を拒む、または従来の額を示す
- 発注側から引き下げを求めるとき、説明を求められても理由や根拠を示さずに引き下げた額を示す
一方、協議と関係のない事項や発注側の営業秘密の開示を求められた場合、説明を尽くしたのに同じ質問が繰り返される場合は、応じなくても違反にはあたらないとされています。
支払のルール:手形禁止と遅延利息
手形での支払は禁止に
改正後は、手形を渡して代金を支払うことが禁止されました。電子記録債権や一括決済方式などの手形以外の支払手段も、支払期日までに代金に相当する金銭と引き換えることが難しいものは使えません。公正取引委員会は、振込手数料を受注側に負担させることも禁止としています。
60日以内の支払期日と年14.6%の遅延利息
支払期日は、給付を受け取った日(役務提供委託ではサービスの提供を受けた日)から60日以内で定めます。期日までに支払わないと、受領日から60日を過ぎた日から実際に支払う日まで、年14.6%の遅延利息を払う義務があります。理由なく代金を減らした場合も、減らした日か受領から60日を過ぎた日の遅いほうから、同じ率の遅延利息がかかります。
テキストは、遅延利息を払えば支払を遅らせたり減額したりしてよいという意味ではない、と念を押しています。フリーランス新法には遅延利息の定めがないため、この点は取適法独自のルールです。フリーランス新法の支払期日は60日ルールの記事で解説しています。
発注内容の明示はメールでもよくなった
委託事業者は、発注したら直ちに、給付の内容・代金の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示しなければなりません。改正で、受注側の承諾がなくてもメールなどの電磁的方法で明示できるようになりました。そのかわり、電磁的方法で明示を受けた受注側が書面を求めたときは、規則で定める場合を除き、遅滞なく書面を交付しなければなりません。電話だけの発注は明示義務の違反になります。
委託事業者には、ほかに取引の記録を作って保存する義務もあります。義務は全部で4つ(発注内容等の明示、支払期日を定める、書類等の作成・保存、遅延利息の支払)、禁止事項は11項目です。フリーランス新法の7つの禁止行為との違いは7つの禁止行為の記事とあわせてご覧ください。
フリーランスの取引で取適法が関わる場面
1. 発注者が一定の規模以上のとき
個人のフリーランスは中小受託事業者の側に入るため、発注者の資本金または従業員数が基準を超えていれば、取適法の対象になり得ます。ただし、対象になる取引の種類は限られていて、役務提供委託は発注者が他者に提供する役務を委託する場合に限られます。自社で使うシステムの運用支援などは対象外になることがあります。
2. 従業員を雇ったフリーランス・法人化したとき
フリーランス新法で守られるのは、従業員を使っていない個人と一人社長の法人です。人を雇ったり役員を増やしたりすると、フリーランス新法の対象から外れます。そのあとも、発注者との規模の差によっては取適法の中小受託事業者として守られるため、事業を広げる人ほど取適法の知識が役に立ちます。
3. 単価の見直しを求めるとき
フリーランス新法には、協議に応じない一方的な代金決定を禁じる定めはありません。取適法の対象になる取引では、見積書を出して引き上げを求めたのに無視される、根拠を示さず据え置かれる、といった対応が問題になり得ます。どちらの法律が適用されるかは取引ごとに判断が必要なため、迷うときは相談窓口や弁護士にご確認ください。
相談先
取適法の違反については、公正取引委員会と中小企業庁が窓口です。改正で、事業所管省庁の大臣にも指導・助言の権限が与えられ、報復措置の申告先にも加わりました。中小企業庁は、全国に設けた「取引かけこみ寺」でも相談を受け付けています。フリーランスとしての相談先の選び方は取引トラブルの相談先の記事をご覧ください。
よくある質問
フリーランスでも取適法で守られますか?
個人のフリーランスは中小受託事業者の側に入るため、発注者の資本金や従業員数が基準を超え、取引の種類も対象にあたれば守られます。ただし、両方の法律に違反する行為には、原則としてフリーランス新法が優先して適用されるとされています。
単価の引き上げを頼んだのに返事がない場合、違反になりますか?
取適法の対象になる取引で、協議の求めを無視したり先延ばしにしたりしたまま代金を据え置くと、一方的な代金決定にあたる可能性があります。協議を求めたことが分かるよう、引き上げ後の見積書をメールで送るなど記録を残しておくと相談しやすくなります。
2025年に結んだ契約にも改正後のルールは適用されますか?
公正取引委員会のテキストでは、改正法は2026年1月1日以降に行う製造委託等に適用されるとしています。2025年中の発注には改正前の下請法のルールが適用されます。更新や新しい発注がいつ行われたかで判断が変わるため、迷う場合は相談窓口にご確認ください。
参考にした公的情報・資料
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov法令検索)
- 取適法・振興法(公正取引委員会)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁 令和7年11月)
- 本法と独占禁止法及び取適法との適用関係等の考え方(公正取引委員会)
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。