反社会的勢力の排除条項とは|フリーランスが契約書で求められること
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
反社会的勢力の排除条項(暴排条項・反社条項)は、契約の当事者が暴力団やその関係者などに当たらないことを表明・確約し、該当することが判明したら催告なしで契約を解除できると定める条項です。業務委託契約や基本契約の末尾近くに置かれることが多く、フリーランスも署名を求められます。
各都道府県の暴力団排除条例は、事業者に対し、契約書にこうした特約を定めるよう努めることを求めています。東京都の条例では、条例上の「事業者」に事業を行う個人も含まれます。定型の条項に見えても、自分が何を表明するのか、違反したらどうなるのかは確かめておきましょう。以下は2026年10月時点の東京都の条例と警視庁の資料を例にした説明です。
なぜ契約書に入っているのか
政府の指針と、都道府県の条例
2007年6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会の申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられました。法務省のページでは、暴力団が企業活動を装うなど不透明化を進めており、暴力団排除の意識が高い企業でも、関係企業と知らずに取引してしまう可能性があるため、関係を断つ取組をより一層進める必要があると説明されています。
その後、各都道府県で暴力団排除条例が定められました。内容は都道府県ごとに違うため、この記事では東京都の条例を例にします。取引先の所在地や業務を行う地域の条例も、必要に応じて確認してください。
東京都の条例が事業者に求めていること
東京都暴力団排除条例第18条は、事業者に次の2つを求めています。いずれも「努めるものとする」という努力義務です。
- 事業に関する契約が暴力団の活動を助長したり、運営に資したりする疑いがあると認める場合に、契約の相手方などが暴力団関係者でないことを確認するよう努める(第1項)
- 契約を書面で結ぶ場合に、次の内容の特約を契約書などに定めるよう努める(第2項)
- 相手方や代理・媒介をする者が暴力団関係者だと判明したら、催告なしで契約を解除できること
- 関連する契約(下請けなど)の当事者が暴力団関係者だと判明したら、相手方に関連契約の解除などを求められること
- 求めたのに相手方が正当な理由なく拒んだら、契約を解除できること
警視庁のQ&Aでは、特約はすべての契約に必須ではないものの、後日相手方が暴力団関係者と判明した場合に催告なしで解除できるよう、可能な限り盛り込むことが望ましいとしています。
条例で使われる言葉の意味
| 言葉 | 東京都の条例での意味(要旨) |
|---|---|
| 事業者 | 事業を行う法人その他の団体、または事業を行う場合における個人(第2条第7号) |
| 暴力団関係者 | 暴力団員、または暴力団もしくは暴力団員と密接な関係を有する者(第2条第4号) |
| 規制対象者 | 暴力団員のほか、暴力団対策法による命令を受けて一定期間を経過しない者など(第2条第5号) |
警視庁のQ&Aでは、「密接な関係」について、うわさがある、写真に一緒に写っている、幼なじみである、親族に暴力団員がいる、といったことだけでは暴力団関係者に当たらないと説明しています。一方、暴力団員と知りながら頻繁に飲食を共にする、といった関係は、社会的に非難されるべき関係の例として挙げられています。
契約書の条項によくある中身
フリーランスが受け取る業務委託契約の暴排条項は、おおむね次の要素で組み立てられています。
- 表明・確約:自分(法人なら役員など)が暴力団員などに当たらず、将来も当たらないこと
- 行為の禁止:暴力的な要求、法的な責任を超えた不当な要求、脅迫的な言動などをしないこと
- 無催告解除:表明に反することが判明した場合などに、催告なしで解除できること
- 損害の扱い:解除によって相手方に生じた損害は賠償しなくてよい、解除された側は賠償を求められない、といった定め
- 関連する契約への措置:再委託先などが該当した場合に、その契約の解除を求められること
警視庁のQ&Aでは、契約の相手方から、暴力団員や暴力団関係者でないこと、暴力的な要求行為をしないことなどを表明・確約させる「表明確約書」の考え方も紹介されています。
フリーランスが確認したい5つのポイント
1. 双方向か、片方だけか
「甲及び乙は」と双方に同じ表明を求める書き方か、「乙は」とフリーランスだけに求める書き方かを見ます。発注者側が該当した場合に、フリーランスから解除できるかどうかも確かめておくと安心です。
2. 表明の対象がどこまで及ぶか
個人で受ける場合は自分自身が中心ですが、法人化している場合は役員、人を雇っている場合は従業員、外注を使う場合は再委託先まで表明の対象に含まれることがあります。自分が把握できない範囲まで「該当しないことを保証する」書き方になっていないかを見ておきましょう。法人化後の契約の切り替えは法人化後の契約切り替えの記事で扱います。
3. 該当の定義があいまいでないか
「反社会的勢力」の定義が条例の言葉に沿っているか、「その他これらに準ずる者」のように広く書かれていないかを確認します。定義があいまいだと、どんな場合に解除されるのかが読み取れません。
4. 解除の効果
無催告で解除された場合に、すでに行った業務の報酬をどう扱うのか、損害賠償の定めがどうなっているのかを確認します。解除の一般的な扱いは中途解約の記事を、賠償の範囲は損害賠償の条項の記事をご覧ください。
5. 再委託先への措置
外注先を使う場合、外注先が該当したときに、その契約の解除を求められる定めがあるかを見ます。再委託そのものの注意点は再委託の記事にまとめています。
利益供与の禁止も知っておく
東京都の条例は、契約時の努力義務とは別に、事業者による規制対象者への利益供与を禁止しています(第24条)。
- 規制対象者が暴力的不法行為等を行うことなどの対償として利益供与をしてはならない(第1項)
- 事業に関し、暴力団の活動を助長し、または運営に資することとなることを知って、規制対象者などに利益供与をしてはならない。ただし、法令上の義務や、事情を知らないで結んだ契約の債務の履行として行う場合など、正当な理由がある場合は除かれる(第3項)
違反があると、公安委員会は防止に必要な措置をとるよう勧告することができ(第27条)、勧告後一定期間内に再び違反した場合などは公表されることがあります(第29条)。警視庁のQ&Aでは、「利益供与」は金品その他財産上の利益を与えることをいい、適正な料金の支払いを伴う取引も該当し得るとされています。
不当な要求を受けたとき・相手に疑いがあるとき
取引の相手方が暴力団関係者かもしれないが本人に確かめられない場合について、警視庁のQ&Aは、最寄りの警察署、警視庁の暴力団対策課、公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターに相談するよう案内しています。相談の際は、相手方の氏名、生年月日、住所など、相手を特定できる資料を用意するとよいとされています。
不当な要求を受けた場合は、一人で対応せず、こうした窓口や弁護士に相談してください。取引上のトラブル全般の相談先は相談先の記事にまとめています。
よくある質問
暴排条項への署名を断ることはできますか?
断ること自体は自由ですが、条例が事業者に特約を定めるよう努めることを求めているため、条項を入れることを契約の前提にしている会社もあります。署名をためらう理由が条項の書き方(片方だけの義務、定義の広さなど)にあるなら、断るのではなく、修正を相談するのが現実的です。
親族に暴力団関係者がいる場合、表明に反することになりますか?
警視庁のQ&Aでは、親族に暴力団員がいることだけでは、暴力団関係者には当たらないと説明しています。ただし、契約書の定義が条例より広く書かれている場合もあるため、条項の文言を確認してください。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
取引先が反社会的勢力かどうか、フリーランスが確かめる方法はありますか?
会社の登記情報やWebサイトなど公開されている情報を見るほか、契約書で相手方にも同じ表明・確約を求める方法があります。相手方に疑いがあるのに本人に確かめられない場合は、警察署や暴力追放運動推進センターに相談できます。相談するときは、相手方を特定できる資料を用意しておきましょう。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。