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確定申告・所得税

開業費とは|独立前の支出の扱いと、経費にする時期の選び方

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

開業費は、事業を始めるまでの間に、開業準備のために特別に支出した費用です。所得税では「繰延資産」に当たり、支出した年にそのまま経費にするのではなく、開業後に償却費として必要経費にします。

償却のしかたは2つあります。60か月で均等に経費にする方法と、確定申告書に書いた額(開業費の額の範囲内)をその年の経費にする任意償却です。任意償却なら、開業した年に全額を経費にすることも、翌年以降に回すこともできます。この記事では、2026年10月時点の所得税法施行令と国税庁の質疑応答事例をもとに、対象になる支出と償却の考え方を整理します。初期費用の全体像は独立の初期費用の記事で扱っています。

開業費に入る支出・入らない支出

所得税法施行令7条は、開業費を「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」と定めています。同じ条文で、資産の取得に要した金額とされるべき費用と前払費用は、繰延資産から除かれています。

支出の種類扱いの考え方
開業準備のために特別に払った費用(準備のための打ち合わせや下調べの交通費など)開業費の候補になる
パソコンやモニターなど、開業後も使い続ける資産の購入費開業費ではなく、使い始めたときから減価償却資産として扱う
開業前に払ったサービスの利用料のうち、年末時点でまだ提供を受けていない分前払費用として、開業費から除かれる
会社員としての通勤費や、生活のための支出開業準備のための支出ではないため、開業費に入らない

表の1行目に挙げた例が開業費に当たるかは、支出の目的と時期で判断が分かれることがあります。「事業を始めるためだけに払ったものか」を説明できるかが目安です。迷う支出は、税理士か税務署に確認してください。パソコンなどの資産の扱いは減価償却の記事で詳しく解説しています。

開業日の前か後かで扱いが分かれる

開業費になるのは、事業を始める前の支出です。開業日以後に払った費用は、開業費ではなく、その年の必要経費として扱います。そのため、まず開業日をいつにするかを決めておく必要があります。

開業日は、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)に書く「事業を始めた日」です。届出の期限や書き方は開業届の記事をご覧ください。開業日は都合で前後させるものではなく、実際に事業を始めた日を書きます。

会社員のうちに副業として業務委託の仕事を受けていた人は、その副業の開始時点で事業がすでに始まっていると見られることがあります。その場合、独立前の支出をすべて開業費にできるとは限りません。副業からの独立は副業から独立する記事もあわせてご覧ください。

償却の2つの方法

開業費を経費にする方法は、所得税法施行令137条で次のように定められています。

方法1年に経費にできる額向いている場面
均等償却開業費の額 ÷ 60 × その年に事業を行っていた月数毎年同じ額を経費にしたい
任意償却開業費の額のうち、まだ経費にしていない残りの範囲で、確定申告書に書いた額経費にする年を自分で選びたい

均等償却の月数は暦に従って数え、1か月に満たない端数は1か月とします。

計算例(仮の数字)

仮に、開業費が30万円、10月1日に開業したとします。

数字はあくまで説明のための例です。

任意償却で知っておきたいこと

国税庁の質疑応答事例は、開業費の任意償却について次のように説明しています(令和7年8月1日現在の法令等に基づく)。

つまり、開業した年の所得が少なければ、開業費を翌年以降に回すという選び方もできます。ただし、この質疑応答事例は特定の照会を前提にした一般的な回答で、個別の取引に当てはめると扱いが異なる場合があると注記されています。どの年に経費にすると有利かは、その年の所得や青色申告の特典(赤字の繰越しなど)によっても変わるため、税理士に相談したうえで決めることをおすすめします。赤字の繰越しは純損失の繰越しの記事で解説しています。

開業費の記録の残し方

任意償却で年をまたいで経費にするなら、「何をいくら払い、そのうち何年にいくら経費にしたか」を後から説明できるようにしておく必要があります。次の2つの表を作っておくと整理しやすくなります。

1. 開業費の明細

支払日支払先内容金額開業準備との関係
例:2026年8月5日〇〇打ち合わせの交通費〇円開業前の取引先候補との打ち合わせ

2. 年ごとの償却の記録

年分その年に経費にした額年末の未償却残高
例:令和8年分〇円〇円

開業した年の確定申告の前に、次の順番で整理すると漏れが出にくくなります。

  1. 開業を決めた時点から開業日の前日までの支払いを、通帳・カード明細・領収書から書き出す
  2. パソコンなどの資産の購入と、前払費用に当たるものを別にする
  3. 残った支出のうち、開業準備のためと説明できるものを開業費の明細に移す
  4. 開業費の合計と、その年に経費にする額(均等償却か任意償却か)を決める
  5. 年ごとの償却の記録に、その年の額と残高を書く

明細の根拠になる領収書や利用明細は、帳簿書類として保存しておきます。保存の期間は書類の保存期間の記事をご覧ください。

確定申告での扱い

開業費は、償却した額をその年の事業所得の必要経費に入れます。所得税法施行令137条は、均等償却の額を基本としたうえで、3項で、開業費の額の範囲内の金額を確定申告書に記載した場合はその記載した額を償却費とすると定めています。任意償却を使う年は、経費にする額を確定申告書に書くことが前提になります。

開業費とその償却は、ほかの経費と同じように帳簿にも記録しておきます。帳簿付けの方法は青色申告の記事、申告全体の流れは確定申告の流れの記事にまとめています。

よくある質問

白色申告でも開業費の任意償却はできますか?

所得税法施行令137条3項は「居住者」が確定申告書に記載した場合の扱いを定めており、条文上、青色申告者に限る定めはありません。ただし、帳簿の付け方や申告書への書き方は申告の種類で変わるため、具体的な記載方法は税務署か税理士にご確認ください。

開業した年に開業費を計上し忘れました。翌年以降に経費にできますか?

国税庁の質疑応答事例では、任意償却が可能な開業費の未償却残高は、60か月を過ぎていても、いつでも償却費として必要経費にできるとされています。ただし、支出した開業費の内容と、過去の年に経費にしていないことを明らかにしておく必要があります。事実関係によって扱いが変わることがあるため、税理士か税務署に確認してから申告してください。

開業前に勉強のために買った本や講座の費用は開業費になりますか?

開業準備のために特別に支出したものかどうかで判断します。独立後の業務に直接使う内容で、事業を始めるために支出したと説明できるものは候補になりますが、会社員としての自己研さんとの区別がつきにくい支出もあります。経費の判断の基準は経費にできるものの記事をご覧ください。迷う場合は税理士・税務署にご相談ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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