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確定申告・所得税

税金を払えないとき|納税の猶予・換価の猶予で分割して納める方法

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

所得税や消費税を期限までに一度に納められないときは、税務署に申請して認められれば、原則として1年以内の分割納付ができます。これが国税の猶予制度で、猶予を受けている間は延滞税が免除または軽減されます。

ただし、猶予は自動では受けられず、申請が必要です。よく使われる「換価の猶予」は納期限から6か月以内に申請しなければならず、遅れるほど延滞税の負担も増えます。払えないと分かった時点で、まず所轄の税務署(徴収担当)に電話で相談するのが出発点です(2026年10月時点で確認できる国税庁の資料にもとづきます)。

払えないまま放っておくと起きること

納期限を過ぎると、納期限の翌日から延滞税がかかります。国税庁のタックスアンサーでは、令和8年中の延滞税の割合は次のとおりです。

期間令和8年中の割合
納期限の翌日から2か月を経過する日まで年2.8%
2か月を経過した日以後年9.1%

2か月を過ぎると割合が大きく上がります。さらに、督促を受けても納めないままでいると、財産の差押えに進むことがあります。申告そのものを遅らせると加算税もかかるため、申告は期限内に出し、納付だけを相談するのが基本です。期限後申告の扱いは確定申告の期限に遅れたときの記事で解説しています。

国税の猶予には2つの種類がある

国税庁の「納税の猶予制度FAQ」では、主な猶予制度として次の2つが示されています。どちらも、要件を満たせば税務署長の許可を受けて分割で納められるようになります。

項目換価の猶予(申請によるもの)納税の猶予
主な場面一度に納めると事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれがある災害・盗難、本人や生計を同じにする家族の病気、事業の休廃業、事業での著しい損失などがあった
申請納期限から6か月以内に申請税務署に相談のうえ申請
ほかの国税の滞納原則として、ほかに滞納がないことほかに滞納があっても受けられる
納税への姿勢納税について誠実な意思があること―
延滞税軽減免除または軽減

フリーランスで多いのは、案件の終了や売上の減少で手元の資金が足りなくなる場面です。売上が大きく落ちて事業で著しい損失が出ている場合は「納税の猶予」、それ以外で一度に納めると資金繰りが立ち行かない場合は「換価の猶予」が候補になります。どちらにあたるかは事情によるため、相談のときに税務署から案内を受けます。

黒字でも受けられることがある

FAQでは、損益が黒字であっても要件を満たせば猶予を受けられるとされています。前年の所得に対する税金を、今年の売上の落ち込みで払えなくなった、という状況も相談の対象になります。

予定納税や消費税の中間申告分も対象

確定申告の分だけでなく、予定納税や中間申告分、修正申告分も、申請して要件を満たせば猶予の対象になります。消費税の中間申告は、今年の売上が前年より大きく減っている場合、仮決算にもとづく中間申告で納める額を抑えられることもあります。予定納税そのものを減らす減額申請は予定納税の記事で扱っています。

「一度に納めるのが難しい」の考え方

猶予の要件の中心は、一度に納付することが難しいかどうかです。FAQでは、納付できる金額=手元の資金-当面の資金繰りに必要な額が、納める税額に足りない場合がこれにあたると説明されています。

仮の数字で考えると、次のようになります。

項目金額
手元の現預金120万円
1か月以内に支払う予定の事業の支出-50万円
納付できる金額70万円
納める税額150万円
一度に納められない額80万円

この例では、納付できる70万円は先に納め、残りの80万円について分割を相談する、という考え方になります。実際にいくらが猶予の対象になるかは、税務署が財産や収支の状況を確かめて判断します。

当面の資金繰りに必要な額は、事業の状況によって違いますが、一般的には事業を続けるために1か月以内に支払う予定の金額が運転資金として差し引かれます。フリーランスなら、外注費、事務所や回線の費用、翌月までに払う経費などです。

猶予を受けられる期間は、原則として1年以内で、財産や収支の状況に応じて最も早く完納できる期間が設定されます。期間内に払いきれないやむを得ない理由がある場合は、延長できることがあります。

申請の手順と準備する書類

  1. 所轄の税務署(徴収担当)に電話で相談する:相談の時間を確保し、持っていく資料を聞くため、事前に連絡する
  2. 猶予申請書を作る:国税庁の「猶予の申請の手引」に書き方が載っている。分からない点は電話で案内を受けられる
  3. 添付書類をそろえる:猶予を受けたい金額が100万円以下なら「財産収支状況書」、100万円を超えるなら「財産目録」と「収支の明細書」
  4. e-Taxか郵送で出す:税務署の窓口に行かなくても申請できる。税理士による代理申請もできる
  5. 許可の通知を受け、分割で納める:通知書に書かれた分割納付の金額を、それぞれの納付日までに納める

審査では、収支の状況を確かめるために帳簿や預金通帳を見せるよう求められることがあります。日ごろから事業用口座と帳簿を整えておくと、申請の準備が早く進みます。

担保が要らない場合

猶予を受けるには原則として担保が必要ですが、次のいずれかにあたる場合は不要です。

申請は早いほど有利

延滞税は、許可された日ではなく申請した日から軽減・免除されます。逆に、納期限を過ぎてから申請すると、納期限の翌日から申請日の前日までの延滞税は軽減されません。換価の猶予の申請期限(納期限から6か月以内)を過ぎると、原則として申請による換価の猶予は受けられなくなります。ほかの猶予を受けられる場合もあるため、期限を過ぎていても早めに税務署に相談してください。

住民税・国民健康保険料・国民年金は別の窓口

国税の猶予は、所得税・消費税など税務署に納める税金が対象です。ほかの支払いは、それぞれ窓口が違います。

支払い相談先
所得税・消費税・源泉所得税など所轄の税務署(徴収担当)
住民税・個人事業税・固定資産税など都道府県や市区町村の担当窓口
国民健康保険料(税)市区町村の担当窓口
国民年金保険料市区町村の窓口・年金事務所(免除・納付猶予の申請)

地方税や社会保険料で猶予を申請したことがある場合、そのときの申請書や財産収支状況書の写しを添えると、国税の申請で一部の記載や書類を省略できるとされています。国民健康保険料の軽減・減免は国保の軽減と減免の記事、国民年金の免除は国民年金の記事、住民税は住民税の記事をご覧ください。

猶予を受けると証明書に記載される

猶予を受けている間に、住宅ローンや融資の審査で納税証明書を求められることがあります。FAQによると、納税証明書(その1)の備考欄には猶予中である旨と猶予期限が記載され、未納の税額がないことの証明(その3)は、猶予を受けている税目については発行されません。所得金額の証明(その2)は、猶予の有無にかかわらず発行されます。証明書の種類と取り方は証明書の取り方の記事で整理しています。

よくある質問

猶予の相談をすると、すぐに差押えをされませんか?

猶予は、期限内に納めるのが難しい人が分割で納めるための制度で、相談すること自体が不利に働く仕組みではありません。むしろ、納めないまま連絡もせずにいると、督促から差押えに進むおそれがあります。払えないと分かった時点で、所轄の税務署(徴収担当)に電話で相談してください。

申告書を出す前に、猶予の相談をしてもよいですか?

申告と納付は別の手続きです。申告書は期限内に出し、納付が難しい分について猶予を相談するのが基本です。申告を遅らせると、加算税や延滞税が増える原因になります。

自分で申請書を書くのが不安です。誰に頼めますか?

国税庁の「猶予の申請の手引」を見ながら作成でき、分からない点は所轄の税務署(徴収担当)が電話で案内しています。税理士に申請書の作成やe-Taxでの代理申請を依頼することもできます。資金繰り全体の見直しも含めて迷う場合は、税理士にご相談ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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