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フリーランスの老後資金の考え方|公的年金の見込みと自分で備える制度の選び方

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

フリーランスの老後資金に、誰にでも当てはまる「◯万円あれば足りる」という額はありません。公的年金で入る見込み額、老後の毎月の支出、その差額を何年分用意するかによって、必要な額は人ごとに変わるためです。

考え方の順番は、①公的年金の見込み額を調べる、②老後の支出を見積もる、③差額を何年分・どの制度で準備するかを決める、の3つです。フリーランスは国民年金(老齢基礎年金)が中心になりやすく、会社員より公的年金の上乗せが少ないため、自分で備える制度の組み合わせが大事になります(2026年10月時点)。

フリーランスの公的年金は老齢基礎年金が中心

フリーランス(国民年金の第1号被保険者)の期間に受け取れる公的年金は、原則として老齢基礎年金です。会社員だった期間がある人は、その期間の分の老齢厚生年金も受け取れます。

日本年金機構の案内による、令和8年度(2026年4月分から)の年金額は次のとおりです。

区分月額(令和8年度)
老齢基礎年金(満額・昭和31年4月2日以後生まれ)70,608円
老齢基礎年金(満額・昭和31年4月1日以前生まれ)70,408円
厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)237,279円

厚生年金の標準的な年金額は、平均的な収入(平均標準報酬45.5万円)で40年間働いた人の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を合わせた給付水準の例です。フリーランスの期間が長いほど、この例との差は大きくなります。

老齢基礎年金の額の計算

老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間(480か月)すべて保険料を納めると満額になります。日本年金機構の計算式(昭和31年4月2日以後生まれ)は、年額847,300円に、保険料を納めた月数などを480か月で割った割合を掛けるものです。免除を受けた期間は、免除の種類に応じて一部が年金額に反映されます。未納の期間は反映されません。

受け取るには、保険料を納めた期間と免除期間などを合わせた受給資格期間が10年以上必要で、原則として65歳から受け取ります。国民年金の保険料(令和8年度は月17,920円)の納め方や免除の仕組みは国民年金の記事で解説しています。

受け取り始める時期で額が変わる

老齢年金は、65歳より遅く受け取り始める「繰下げ」で増やせます。日本年金機構の案内では、増額率は65歳に達した月から繰下げを申し出た月の前月までの月数×0.7%で、75歳まで繰り下げると最大84%です。増えた額は生涯続きます。60歳から65歳までの間に早く受け取る「繰上げ」もできますが、その場合は減額された年金になります。

何歳まで働くか、ほかの収入や資産をどれだけ持つかで、受け取り始める時期の選び方は変わります。

老後資金を自分で計算する手順

手順1:公的年金の見込み額を調べる

まず、自分が受け取れる年金の見込み額を調べます。毎年届くねんきん定期便や、日本年金機構のねんきんネットで、これまでの加入記録と見込み額を確かめられます。会社員だった期間がある人は、厚生年金の分も含めて確かめます。

手順2:老後の毎月の支出を見積もる

今の支出をもとに、老後に変わるものを足し引きします。

住まいが持ち家か賃貸かで、老後の支出は大きく変わります。

手順3:不足する額を年数で掛ける

毎月の支出から年金の見込み額を引いた差額に、12か月と、年金を受け取る期間の想定年数を掛けます。そこへ、住まいの修繕や車の買い替えなど、一度に出ていく支出を足します。

手順4:準備できる期間で割る

手順3の額を、今から老後までの年数で割ると、1年あたりに準備する額の目安になります。退職金のないフリーランスは、この額を自分で積み立てる必要があります。

計算例(仮の数字)

計算の流れを示すための仮の数字です。実際の額は、ご自身の見込み額と支出で置き換えてください。

12万円×12か月×25年+300万円=3,900万円が、この仮の条件での準備額です。準備期間が仮に25年あれば、1年あたり156万円になります。

自分で備える制度を比べる

フリーランスが使える主な制度を並べます。どれも目的と引き出せる時期が違います。

制度掛金・投資額の上限掛金の控除受け取れる時期
付加年金月400円社会保険料控除老齢基礎年金に上乗せ(200円×納付月数を年額に加算)
国民年金基金iDeCoと合わせた上限の範囲内社会保険料控除原則65歳から年金で受け取る
iDeCo国民年金基金・付加保険料と合わせて月68,000円。2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から75,000円小規模企業共済等掛金控除原則60歳から。75歳までの間で受け取り始める時期を選ぶ
小規模企業共済月1,000〜70,000円小規模企業共済等掛金控除廃業・退任などのとき
NISA年間360万円、生涯1,800万円(簿価)なし(運用益が非課税)制限なし(いつでも売却できる)

付加年金と国民年金基金は同時に入れません。iDeCoの掛金を増やすには自分で手続きが要ります。各制度の詳しい仕組みは、付加年金の記事、国民年金基金の記事、iDeCoの記事、小規模企業共済の記事、NISAの記事で解説しています。

「控除」と「引き出しやすさ」のどちらを取るか

掛金が所得控除になる制度は、払った年の所得税・住民税が軽くなる一方、原則として老後や廃業まで引き出せません。NISAは控除がない代わりに、いつでも売却して現金にできます。ただし、NISAやiDeCoで投資信託などを選ぶ場合は、預金と違って元本割れのおそれがあります。

フリーランスは収入の波が大きいため、引き出せないお金だけを増やすと、案件が途切れたときに手元の資金が足りなくなることがあります。

準備の順番の考え方

制度の選び方に正解はありませんが、次の順番で考えると、無理のない計画にしやすくなります。

  1. 国民年金を未納にしない:老齢基礎年金の土台になる。払えない時期は免除・納付猶予を申請する
  2. 生活費の備えを先に確保する:収入が途切れても数か月暮らせる資金を、引き出せる形で持つ。考え方は収入が途切れたときに備える貯蓄の記事をご覧ください
  3. 引き出せない制度は、続けられる額にする:案件の切れ目でも払える掛金にする
  4. 残りを、目的に合う制度に振り分ける:老後の年金を増やしたいのか、廃業時の資金を作りたいのか、自由に使える資産を持ちたいのかで選ぶ

法人化して厚生年金に加入すると、公的年金の構造と使える制度が変わります。詳しくは法人化したときの社会保険の記事をご覧ください。どの制度にいくら回すかは、所得や家族構成で答えが変わるため、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。

よくある質問

フリーランスの老後資金は結局いくら必要ですか?

決まった額はありません。公的年金の見込み額、老後の毎月の支出、想定する年数によって大きく変わります。ねんきん定期便などで見込み額を調べ、毎月の支出との差額に年数を掛けて、自分の数字で計算してください。計算の前提を変えると結果も変わるため、数年ごとに見直すことをおすすめします。

国民年金だけで老後の生活費をまかなえますか?

令和8年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)です。これで足りるかどうかは、住まいや支出の状況によります。不足しそうな場合は、付加年金や国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済などで上乗せするか、働く期間や受け取り始める時期を考えることになります。

年金を受け取りながら働くことはできますか?

できます。フリーランスとして業務委託で働く場合、報酬を受け取りながら老齢基礎年金を受け取れます。法人の役員として厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合は、報酬の額によって年金の一部が支給停止になる仕組み(在職老齢年金)があります。具体的な額は年金事務所でご確認ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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