出張の旅費・宿泊費の経費の考え方|観光を兼ねた出張・同伴者・記録の残し方
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
業務のための出張でかかった交通費や宿泊費は、必要経費にできます。観光や私用を兼ねた出張では、経費にできるのは業務の部分に限られ、私用の部分は家事上の費用になります。海外への出張については、国税庁の所得税基本通達(37-16〜37-22)が、旅行の目的・旅行先・経路・期間などを総合して判断し、業務と観光を兼ねたときは期間の比などで按分する考え方を示しています。
取引先が旅費を負担するかどうかや、精算の方法は契約で決まります。その点は交通費・経費の負担の記事にまとめているので、この記事では、自分で負担した旅費を経費にするときの考え方を、2026年10月時点の国税庁の資料をもとに整理します。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。
経費になる旅費の範囲
国税庁は、必要経費を、収入を得るために直接要した費用や、業務上の費用と説明しています。業務のための出張では、次のような支出が旅費交通費の候補になります。
| 支出 | 考え方 |
|---|---|
| 電車・新幹線・飛行機・バスの運賃 | 業務の目的地までの往復は経費の候補 |
| 現地での移動(タクシー、レンタカーなど) | 業務の移動の部分 |
| 宿泊費 | 業務の日程に必要な泊数の分 |
| 荷物の配送料、空港までの交通費 | 業務の移動に付随するもの |
| 海外出張のビザ・渡航手続きの費用 | 業務の渡航に必要なもの |
一方で、出張中の自分の食事代や、私的な買い物、観光の入場料などは、私用の面が強い支出です。取引先との打ち合わせを兼ねた食事は、会議費・交際費の考え方で判断します(会議費・交際費の記事)。
フリーランスのエンジニアやコンサルの場合、遠方の客先でのキックオフや、システムの移行作業への立ち会い、技術カンファレンスへの参加などが、出張の典型的な場面です。カンファレンスの参加費そのものの考え方は書籍・セミナー・資格の費用の記事で解説しています。
観光や私用を兼ねたときの考え方
国内の出張
出張のついでに観光をしたり、帰省を兼ねたりすることもあります。このような旅費は、業務と私用が混ざった家事関連費として扱われます。所得税基本通達45-2は、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定し、50%以下でも業務に必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分を経費にしてよいとしています。
国内の出張について、海外渡航のような細かい通達があるわけではありません。ただ、考え方の土台は同じで、どこまでが業務の移動・宿泊で、どこからが私用かを区分して説明できるようにしておくことが大切です。たとえば、業務の日程のあとに私用で1泊延ばした場合、延ばした分の宿泊費は私用の部分になります。
海外への出張
海外への渡航費について、所得税基本通達は次のような考え方を示しています。
- 経費にできる範囲(37-16):事業を営む人が自分の海外渡航のために支出した費用は、その渡航が事業の遂行上直接必要と認められる場合に限り、交通機関の利用や宿泊などの費用に充てられた部分を経費にする
- 全期間が業務の場合(37-18):旅行期間のおおむね全期間を通じて明らかに業務に直接必要な渡航なら、不当に多額でない限り、全額を旅費として経費にできる
- 判定の方法(37-19):目的・旅行先・経路・期間などを総合して実質的に判定する。観光渡航の許可を得て行う旅行、旅行会社などが行う団体旅行に応募した旅行、同業者団体などが主催する主に観光目的の団体旅行は、原則として業務に直接必要な渡航にあたらない
- 業務と観光を兼ねた場合(37-21):業務に必要な旅行の期間と、そうでない期間の比などで按分し、業務の部分を経費にする。ただし、渡航の直接の動機が特定の取引先との商談や契約の締結など業務のためで、その機会に観光をした場合は、取引先の所在地など業務を行う場所までの往復の旅費は業務の旅費とし、残りの費用を按分する
- 観光目的の旅行に業務の部分がある場合(37-22):3にあたる旅行でも、旅行先や仕事の内容から業務に直接関連する部分があれば、その部分の旅行に直接かかった費用は経費にできる
按分のイメージを、数字の例で示します。現地での滞在5日のうち、業務が3日、観光が2日で、渡航の直接の動機が業務だった場合は、往復の航空運賃は業務の旅費とし、滞在中の宿泊費などの費用を3対2の比などで按分する考え方になります。実際にどの比を使うかは、行程の中身によって変わります。
家族を同伴したとき
出張に家族を同伴した場合の費用について、海外渡航の通達37-20は、同伴者にかかる費用は原則として必要経費に算入しないとしています。例外として、次のように明らかに渡航の目的を達するために必要な同伴と認められる場合は、通常必要と認められる費用を経費にできるとしています。
- 自分が常時補佐を必要とする身体障害者で、補佐人を同伴する場合
- 国際会議への出席などのために配偶者を同伴する必要がある場合
- 外国語に堪能な人や高度な専門知識を持つ人が必要で、使用人に適任者がいないため、親族などを同伴する場合
国内の出張でも、家族の交通費や宿泊費は、業務に必要な同伴であることを説明できない限り、私用の部分と考えるのが基本です。家族と同じ部屋に泊まった場合は、自分の分を区分できるかどうかも確かめます。
自分への「出張手当」は従業員の旅費とは別に考える
会社員が会社から受け取る出張の旅費は、通常必要と認められる範囲であれば非課税とされています(国税庁 No.2508)。また、事業主が従業員に支給する海外渡航の旅費は、業務に直接必要で通常必要と認められる部分に限り、旅費として必要経費にできるとされています(通達37-17)。
これに対して、事業主本人の海外渡航について通達37-16が経費にできるとしているのは、交通機関の利用や宿泊などの費用に充てられた部分です。従業員に支給する旅費と同じように、自分自身に定額の「日当」を払う形をとっても、その扱いが同じになるとは限りません。自分への手当を経費にすることを考えている場合は、事前に税理士・税務署にご確認ください。
記録の残し方
旅費は、金額だけでなく、何のための出張だったかを後から説明できることが大切です。出張ごとに、次の項目を記録しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付・行程 | 出発・帰着の日時、立ち寄った場所 |
| 目的 | 客先での打ち合わせ、移行作業、カンファレンスへの参加など |
| 相手 | 訪問先の会社名・担当者(社外秘の場合は自分のメモに) |
| 費用の明細 | 交通手段、区間、金額、宿泊先と泊数 |
| 私用の部分 | 観光や延泊をした日と、その分の費用 |
予約確認のメール、航空券の控え(搭乗券や eチケット)、宿泊の領収書、交通系ICカードの利用履歴を残しておくと、記録の裏付けになります。業務の日程が分かる資料(会議の招待、作業計画)も一緒に保存しておくと、業務との関係を説明しやすくなります。書類の保存期間は書類の保存の記事で確かめてください。
消費税の課税事業者は、旅費の仕入税額控除にインボイスの保存が必要かどうかも確かめる必要があります。取引の種類によって扱いが分かれるため、インボイス制度の基本の記事や国税庁の案内を確認し、迷う場合は税理士にご相談ください。
よくある質問
出張先での自分の食事代は経費になりますか?
食事は出張でなくても必要なもので、私用の面が強い支出です。取引先との打ち合わせを兼ねた食事であれば、会議費・交際費として考えます。自分だけの食事代を経費にできるかどうかは、事情によって判断が分かれるため、税理士・税務署にご相談ください。
新幹線のグリーン車やビジネスクラスの料金も経費になりますか?
座席の等級について、国内の出張を対象にした通達はありません。海外渡航の通達37-18は、全期間が業務の渡航について、社会通念上合理的な基準で計算されているなど不当に多額でない限り、全額を旅費として経費にできるとしており、業務に見合った範囲かという視点は参考になります。移動中に作業をする必要があるなど、上位の座席を選ぶ理由を説明できるようにしておきましょう。金額が大きくなる場合は、事前に税理士に相談すると安心です。
海外の技術カンファレンスに参加する費用は経費になりますか?
渡航の目的・旅行先・期間などから、業務に直接必要な渡航と認められれば、交通費や宿泊費は経費の候補になります。カンファレンスの内容が今の業務とどう関係するかを説明できるようにしておきます。会期の前後に観光をした場合は、その期間の費用を按分して私用の部分を除きます。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。