税務調査の流れ|フリーランスが備えておくことと通知が来たときの対応
公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト
税務調査は、税務署が申告の内容を確かめる手続きです。実地の調査では、原則として事前に電話などで通知があり、調査を始める日時・場所、対象になる税目と期間、調査の目的が伝えられます。
フリーランスが備えておくことは、特別な対策ではありません。帳簿と請求書・領収書を決められた期間残し、「この入金は何の報酬か」「この支出は業務にどう関係するか」を説明できる状態にしておくことです。この記事では、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ」をもとに、調査の流れと対応を整理します(2026年10月時点)。
税務署からの連絡が「調査」とは限らない
税務署から電話や文書で連絡が来ても、それがすぐ税務調査というわけではありません。国税庁のFAQでは、調査とは別に「行政指導」として、申告書の計算誤りや記載漏れが疑われるときに、自主的な見直しを求める連絡をすることがあると説明しています。
| 連絡の種類 | 内容 | 修正したときの扱い |
|---|---|---|
| 行政指導 | 申告書の誤りが疑われる点について、自主的な見直しと、必要なら修正申告の提出を求める | 自主的に修正申告を出せば、過少申告加算税はかからない(延滞税はかかることがある) |
| 税務調査 | 質問や帳簿の確認をして、申告内容が正しいかを確かめる | 調査の内容によって加算税がかかることがある |
国税庁は、担当者が手続きに入る前に、調査と行政指導のどちらにあたるかを納税者に明示するとしています。連絡を受けたら、まず「これは調査ですか、行政指導ですか」と確かめておくと、その後の対応を判断しやすくなります。
なお、もとの申告が期限後申告だった場合、行政指導を受けて自主的に修正しても、無申告加算税が原則5%かかります。加算税の割合や延滞税は修正申告の記事と期限後申告の記事で解説しています。
税務調査の流れ
国税庁のFAQに沿って、実地の調査の流れをまとめます。
1. 事前通知
実地の調査の前に、原則として、相当の時間的余裕を置いて電話などで通知があります。通知される内容は次のとおりです。
- 実地の調査を行うこと
- 調査を始める日時と場所
- 調査の対象になる税目と課税期間
- 調査の目的
事前通知の方法は法令で決まっておらず、原則として電話の口頭で行うとされています。何日前に通知するかも一律には決まっていません。
都合の悪い日時が分かっていれば、通知の時点で申し出ることができます。通知の後でも、一時的な入院や業務上やむを得ない事情があれば、日時の変更を協議するとされています。変更の申し出は口頭でかまいません。常駐の案件に参画している日は対応が難しいこともあるため、稼働の予定を手元に用意して電話を受けると話が早く進みます。
ただし、事前通知をすると正確な税額の把握が難しくなるおそれがあると判断された場合などは、事前通知なしで調査が行われることもあります。
2. 実地の調査
調査の当日は、担当者が自宅や事務所などに来て、申告書の内容について質問し、帳簿や書類の提示・提出を求めます。正当な理由なく提示・提出を拒んだり、うその記載をした帳簿を出したりすると、罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が科されることがあります。国税庁は、提示を求める際には趣旨を説明し、理解と協力のもとで行うとしています。
帳簿や書類を税務署で預かりたいと求められることもあります(留置き)。預けた物件は、業務で必要になれば返還を求めることができます。
調査の途中で、通知された期間より前の年にも同じ誤りがあると疑われる場合は、対象が広がることがあります。その場合は、対象を広げる旨と理由が説明されるとされています。
3. 調査の終わり方
調査の結果は、大きく2つに分かれます。
| 結果 | その後 |
|---|---|
| 申告に誤りがない | 「更正決定等をすべきと認められない」旨の書面が届く |
| 申告に誤りがある | 誤りの内容と金額の説明を受け、原則として修正申告(または期限後申告)を勧められる |
修正申告を勧められても、応じるかどうかは任意です。応じない場合は、税務署が調査結果にもとづいて更正などの処分をします。国税庁は、勧めに応じなかったことで不利な扱いを受けることは基本的にないとしています。
ここで知っておきたいのが、修正申告と更正の違いです。修正申告を自分で出した場合、後から誤りに気づいても不服申立てはできず、一定期間内の「更正の請求」で直すことになります。税務署の更正処分に納得できない場合は、不服申立てができます。説明に納得できない点があるときは、その場で応じず、税理士に相談してから判断する方法もあります。
フリーランスが日ごろ備えておくこと
帳簿と書類を保存期間どおりに残す
事業所得がある人は、青色申告・白色申告を問わず、記帳と帳簿書類の保存が必要です。国税庁によると、保存期間は次のとおりです。
| 区分 | 帳簿 | 請求書・領収書などの書類 |
|---|---|---|
| 青色申告 | 原則7年間 | 原則7年間(請求書・見積書・納品書などは5年間) |
| 白色申告 | 収入と経費を記載した帳簿は7年間 | 5年間 |
令和5年分以後の申告では、調査で売上の帳簿を提示しなかったり、帳簿の売上の記載が不十分だったりすると、通常の加算税に5%または10%が上乗せされる措置もあります。帳簿は、税額を計算するためだけでなく、申告の正しさを示す材料でもあります。
メールやWebで受け取った請求書・領収書は、データのまま保存するルールがあります。調査でデータの提出を求められたときに応じられるよう、電子帳簿保存法の記事で保存の方法を確かめておきましょう。
売上は「契約・請求・入金」で突き合わせられるようにする
調査で最初に確かめられやすいのは売上です。銀行口座の入金と帳簿の売上が合っているか、12月の稼働分が翌年の売上になっていないかなどが見られます。
- 入金口座は事業用に分けておく
- 取引先ごとに、契約書・請求書の控え・入金記録をまとめる
- 源泉徴収された報酬は入金額と請求額がずれるため、差し引かれた税額も記録しておく(源泉徴収の記事)
経費は「業務との関係」を記録しておく
経費で説明を求められやすいのは、私用と区別しにくい支出です。国税庁は、私用と業務用が混ざった支出のうち必要経費になるのは、業務の遂行上直接必要だったことが明らかに区分できる部分に限られるとしています。
- 飲食代・贈答品:相手・目的・人数を記録する(会議費・交際費の記事)
- 自宅の家賃・通信費:按分の根拠を残す(家事按分の記事)
- 書籍・機器・ソフトウェア:どの業務で使ったかを説明できるようにする(経費の記事)
通知を受けたときの準備
事前通知を受けたら、調査の日までに次のものをそろえておきます。
- 対象期間の確定申告書の控えと決算書(収支内訳書)
- 帳簿(会計ソフトのデータを含む)
- 請求書・領収書・契約書(電子データを含む)
- 事業用の通帳や入出金の明細
- 按分の根拠や、飲食代の相手を書いたメモ
準備の途中で申告の誤りに気づいた場合は、どう直すかを税理士に相談しておくと、調査の当日に落ち着いて説明できます。税理士に税務代理を頼んでいる場合は、事前の同意があれば、事前通知や調査結果の説明を税理士に対して行ってもらうこともできます。
取引先が税務調査を受け、その確認のために取引の相手であるフリーランスに問い合わせがあることもあります(反面調査)。国税庁は、反面調査でも運用上、原則としてあらかじめ連絡するとしています。契約書や請求書の控えがあれば、こうした問い合わせにも答えやすくなります。
調査の後に見直しておくこと
調査で誤りを指摘された場合、同じ誤りが翌年以降の申告に残っていないかを見直しましょう。指摘された処理を直さないまま申告を続けると、次の申告でも同じ論点が残ります。
国税庁のFAQでは、実地の調査をした税目・課税期間について、原則として再調査はしないとしています。ただし、取引先の調査で新たな情報が見つかった場合など、法令で定める場合には再び調査が行われることがあります。
調査の対応や修正の判断は、個別の事情で変わります。迷う場合は税理士・税務署にご相談ください。
よくある質問
税務調査はどれくらいの期間さかのぼって行われますか?
事前通知で、対象になる税目と課税期間が伝えられます。国税庁のFAQによると、税務署が税額を増やす更正ができる期間は、原則として5年です。調査の途中で、通知された期間より前にも同じ誤りが疑われる場合は、理由の説明を受けたうえで対象が広がることがあります。
調査の日に仕事が入っている場合は、日程を変えてもらえますか?
事前通知の時点で都合の悪い日時を申し出ることができます。通知の後でも、業務上やむを得ない事情などがあれば変更を協議するとされています。申し出は口頭でかまいません。
調査で修正申告を勧められたら、応じなければいけませんか?
応じるかどうかは任意です。応じない場合は、税務署が調査結果にもとづいて更正などの処分をします。修正申告をすると不服申立てはできなくなり、誤りがあれば更正の請求で直すことになるため、内容に納得できない場合は税理士にご相談ください。
参考にした公的情報・資料
記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。