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業務委託契約の基礎

違約金・損害賠償額の予定の条項|民法420条の仕組みと署名前に確かめること

公開 2026-10-29 監修:株式会社エージェントベスト

損害賠償額の予定は、契約違反があったときに払う額を、前もって契約で決めておく条項です。民法第420条で認められており、契約書に「違約金」と書かれていれば、賠償額の予定と推定されます。

予定の条項があると、実際の損害がいくらだったかを細かく証明しなくても、決めた額が請求の基準になります。フリーランスが署名前に確かめたいのは、どの違反で発生するのか、額はどう決まるのか、ほかの損害賠償とどう関係するのかの3点です。2026年10月時点の民法の条文に沿って見ていきます。

民法420条が定めていること

民法第420条は3つの項からなります。

項内容読み方
第1項当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる違反時の額を前もって合意できる
第2項賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない予定額を払っても、契約の履行や解除は別に求められる
第3項違約金は、賠償額の予定と推定する「違約金」と書けば、原則として予定として扱われる

また第421条は、金銭以外のものを賠償に充てると予定した場合にも、同じ考え方を準用するとしています。

2020年4月に施行された改正前の第420条第1項には、「裁判所は、その額を増減することができない」という一文がありました。改正でこの一文は削られています。ただし、予定した額が当然に見直されるという意味ではありません。合意した額が基準になることは変わらないため、署名前に額の決め方を読んでおくことが大切です。

「損害賠償の条項」との違い

損害賠償の条項と、賠償額の予定(違約金)の条項は、目的が違います。

比べる点一般的な損害賠償の条項賠償額の予定・違約金の条項
額の決まり方実際に生じた損害を基準にする契約で決めた額・計算式を基準にする
損害の証明請求する側が損害と額を示す決めた額をもとに請求される
上限の役割上限を決めておくと、負担の最大値が決まる予定額そのものが負担の目安になる
フリーランス側から見た注意上限がないと、報酬を大きく超えることがある実際の損害が小さくても、予定額を求められることがある

上限の考え方や、責任を負う条件・範囲の読み方は損害賠償の条項の記事で詳しく扱っています。この記事では、額をあらかじめ決める条項に絞って説明します。

「違約金」は推定。書き方で扱いが変わる

第420条第3項は「推定する」という書き方です。推定は、反対の合意があることが示されれば覆り得ます。そのため、契約書の書き方によっては、違約金が損害賠償とは別に払う制裁金(違約罰)として扱われる余地があります。

たとえば、次のような一文があると、違約金に加えて実際の損害の賠償も求められると読める可能性があります。

違約金の条項を読むときは、その後ろに続く一文まで目を通し、違約金で終わりなのか、別に損害賠償もあるのかを確かめます。どちらと読むべきか迷う場合は、署名前に発注者に確認し、答えを文字で残しておきましょう。

フリーランスの契約で見かける違約金の条項

業務委託契約で違約金や予定の条項が置かれやすいのは、次のような場面です。

場面書き方の例確かめたいこと
中途解約「乙が期間途中で解約するときは、委託料の◯か月分を違約金として支払う」予告期間を守った場合も対象か。発注者側の解約にも同じ定めがあるか
直接取引の禁止「甲の顧客と直接契約したときは、◯◯相当額を支払う」対象の相手と期間。契約終了後いつまで続くか
秘密保持違反「違反1件につき◯円」秘密情報の定義が広すぎないか。過失による漏えいも含むか
納期の遅れ「遅延1日につき委託料の◯%」発注者側の事情による遅れが除かれているか。上限はあるか
人材の引き抜き「甲の従業員を勧誘したときは◯◯を支払う」何をもって「勧誘」とするか

直接取引の禁止や競業避止の条項そのものの読み方は競業避止の記事、秘密保持の範囲はNDAの記事、中途解約の予告期間は中途解約の記事で解説しています。

額が過大な場合はどうなるか

予定した額が、実際に考えられる損害と比べて極端に大きい場合、その全部がそのまま認められるとは限りません。民法第90条は、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効としており、過大な違約金の定めについて、この考え方などから一部の効力が否定された裁判例もあります。

ただし、どこからが過大かは、契約の目的、当事者の関係、損害の見込みなど個別の事情で判断されます。「多すぎるから無効になるだろう」と考えて署名するのではなく、署名前に額の決め方を相談しておくほうが安全です。

また、フリーランスガイドラインは、取引上の地位が優越している発注事業者が、一方的に取引の条件を設定・変更し、フリーランスに正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合は、優越的地位の濫用として問題となるとしています(独占禁止法第2条第9項第5号ハ)。片方だけに重い違約金を一方的に課す条項も、事情によってはこの考え方に関わります。考え方は優越的地位の濫用の記事で解説しています。

署名前に条項を読む順番

違約金の条項は、ほかの条項と組み合わさって意味が決まります。次の順番で読むと、見落としを減らせます。

  1. 定義を読む:「違反」「秘密情報」「顧客」など、違約金の発生条件に出てくる言葉の定義を先に確かめる
  2. 発生条件を読む:どの行為が対象か。故意だけか、過失も含むか。契約終了後も続くか
  3. 額の計算式を読む:固定額か、報酬の何か月分か、日数に比例するか。税込か税別か
  4. ほかの条項との関係を読む:損害賠償の上限の条項が違約金にも及ぶか、違約金とは別に損害賠償があるか
  5. 相手方にも同じ定めがあるかを読む:発注者側の違反に対応する条項があるか

基本契約と個別契約に分かれている場合は、違約金が基本契約に書かれていて、個別契約では触れられていないこともあります。両方を並べて読み、どちらが優先するかの定めも確かめておきましょう。

修正を相談するときの考え方

違約金の条項は、削除を求めるより、範囲を絞る提案のほうが話が進みやすい傾向があります。たとえば次のような方向です。

  1. 対象を絞る:「故意または重大な過失による違反に限る」とする
  2. 額を限定する:「◯か月分」ではなく「当該個別契約の委託料を上限とする」など、損害賠償の上限と合わせる
  3. 実損を超えないようにする:「違約金は実際に生じた損害の額を上限とする」と加える
  4. 双方に同じ条件を置く:発注者側の中途解約や支払遅延にも同じ考え方を当てはめる
  5. 別の賠償との関係をはっきりさせる:「違約金の支払により、当該違反に関する損害賠償は完了する」と加える

修正を伝えるときの進め方は契約書の修正を求めるときの記事も参考にしてください。合意した内容は、契約書の修正か覚書で書面に残します。

よくある質問

違約金の条項がある契約で途中解約したら、違約金は避けられませんか?

契約で決めた解約の手続き(予告期間など)を守った場合にまで違約金がかかるのか、条項の書き方を確かめる必要があります。予告期間を守った解約を対象にしていない条項もあれば、期間途中の解約すべてを対象にしている条項もあります。払うべきか争いがある場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

実際の損害がほとんどないのに、違約金の全額を請求されました。

賠償額の予定は、実際の損害額にかかわらず予定した額を基準にする仕組みです。そのため、損害が小さいことだけで当然に減るわけではありません。一方で、極端に過大な額は効力が否定されることもあり、事情によって判断が分かれます。請求の根拠となる条項と計算を書面で示してもらい、取引トラブルの相談先にも相談してみてください。相談先は相談先の記事にまとめています。

違約金を報酬から差し引くと言われました。応じる必要はありますか?

その場で了承する必要はありません。差し引きの根拠になる条項と金額の計算を、書面で示してもらいましょう。従業員を使う発注者が1か月以上の業務委託をしている場合、フリーランス新法では、フリーランスに責任がないのに報酬を減らすことは禁止されています(禁止行為の記事)。違約金の発生そのものに争いがあるときは、差し引きを認める前に専門家にご相談ください。

参考にした公的情報・資料

記事の内容は公開日時点の情報にもとづきます。制度や税率は変わることがあるため、手続きの前に必ず各機関の最新情報をご確認ください。

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